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質量分析法 (マススペクトル)
次の文を読み,問1,2に答えよ。 ただし,原子量はH=1.0, C=12,0=16, F = 19, P
=31 とする。
<神経ガス >
タブン (1937年),サリン (1938年), ソマン (1944年)は,第二次世界大戦中にドイツで開発
された化学兵器 (神経ガス)である。 しかし、終戦のため実戦で使用されることはなかった。神
経ガスは合成のための設備が比較的簡単なため、核兵器に比べ, 多くの国で作られている。現
在ではこれらの化学兵器は世界各地で合成貯蔵されており,その廃棄が国際問題となってい
る。
(b)
(a)
CH-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3
43
B
29
39
15
130
20
30
53
2
40
10
50
図1-1
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(A)
0
CH 3
CH-P-O-CH
次に図1-2(A)に神経ガスのサリンの構造式, (B)にそのマススペクトルを示す。
ヘキサンのマススペクトル
60
_6971
70 80m/z
CH3
<質量分析法>
化学物質の同定には,質量分析法が用いられる。 同定したい分子に高エネルギーをもたせた
電子を衝突させてイオン化し,さらに, 化学結合を切断することによって, いくつかの断片 (フ
ラグメント)が得られる。 イオン化した分子量と同じ質量数(m) をもつ分子を親ピーク (分子ィ
オンピーク), 親ピークより質量数の少ないピークをフラグメントとよぶ。 また, 信号強度の最
も強いピークを基準ピークという。 これらのイオン化した分子やフラグメントの質量数を横軸,
信号強度(イオン量)を縦軸にとったものがマススペクトルである。これらのパターンから分子
が同定される。 なお,電荷数 (z)は1をとることが多く, フラグメントに1価だけが観測され
る場合,m/zはmと同じ数値になり,各フラグメントの質量数と一致する。 本問題では z=1
のみとする。
例として, 図1-1 (A)にヘキサンの構造式, (B)にそのマススペクトルを示す。 親ピークは
m/z= 86, 基準ピークはm/z=57である。 下記の図に示すように,m/z=71は結合(a)が切断
され,メチル基 (-CH) が脱離したフラグメント, m/z=57は結合(b)が切断され,エチル基
(-CH2CH)が脱離したフラグメントである。
(B)
信号強度
F
99 L
(2)
43
81
125
1 (1)
147
67
199
-
40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240m/z
図 1-2 サリンのマススペクトル