そんな折に、ふと開いたレヴィナスの 『実存から実存者へ』
(1947)の一節に目がとまった。
労苦は償いえない。人類の幸福が個人の不幸を正当化し
ないように、 未来の報酬は現在の労苦を汲み尽くせはし
ない。労苦を償いうるような正義は存在しないのだ。 労
苦が償われるためには労苦の瞬間に立ち戻ることができ
るか、この瞬間を蘇らせることができるかしなければな
らない。 希望を抱くとはしたがって、 償いえないものの
償いを希望すること、したがって現在のために希望する
ことである。 (Levinas, 1947=1990=2005:191/156)