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第四間 次の「山月記」の文章を読んで、後の問いに答えよ。
隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉
に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところすこぶる厚く、賤吏に甘んずるを
da潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に帰臥し、人
と交わりを絶って、ひたすら詩作にふけった。 下吏となって長く膝を俗悪な大官
の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に潰そうとしたのである。しか
し、文名は容易に揚がらず、生活は日を追うて苦しくなる。李徴はようやく焦
躁にかられてきた。このころからその容貌も刻となり、肉落ち骨秀で、眼光の
みいたずらに炯々として、かつて進士に登第したころの豊頬の美少年の面影は、
どこに求めようもない。数年の後、貧窮に堪えず、妻子の衣食のためについに節
を屈して、再び東へ赴き、「一地方官吏の職をすることになった。 ②一方、これ
は、己の詩業に半ば絶望したためでもある。かつての同輩は既にはるか高位に進
み、彼が昔、鈍物としてシガにもかけなかったその中の下命を拝さねばなら
ぬことが、往年の儁才李徴の自尊心をいかに傷つけたかは、想像に難くない。彼
は快々として楽しまず、狂悖の性はいよいよ抑え難くなった。 一年の後、公用で
旅に出、汝水のほとりに宿ったとき、(Ⅰ)発狂した。ある夜半、急に顔色
を変えて寝床から起き上がると、何か訳の分からぬことを叫びつつそのまま下に
飛び降りて、闇の中へ駆け出した。彼は二度と戻って来なかった。 付近の山野を
ソウサクしても、なんの手掛かりもない。 その後李徴がどうなったかを知る者
は、誰もなかった。
すでに
問 二重傍線部a〜cの漢字は読みを平仮名で記し、片仮名は漢字に直せ。 (知1点×3
a潔し 62 b シガ 63 c ソウサク 64
問空欄に入る最も適当な語句を、次から選べ。 65(思2点)
たぶん 3 ついに
どうやら
問三傍線部①「焦燥にかられてきた」とあるが、その原因を説明している部分を、本文中よ
二五字で抜き出し、始めと終わり三文字を答えよ。 66 (含句読点) (思3点)
問四傍線部②「一方、これは、己の詩業に半ば絶望したためでもある」の「一方」は、「己
る。
の詩業に半ば絶望したため」の他のもう一つの理由を受けたものである。その「他のもう
一つの理由」にあたる部分を、本文中より一五字で抜き出せ。 67 (含句読点)(3点)
問五 「山月記」の作者について述べた次の文の空欄を、適切な語で埋めよ。(知各1点)
作者の
)は、漢学者の家系で育ち、深い漢学の素養があった。中国の古典
素材に近代人の( 69 )を追究した。 戦時下に、芸術性の高い作品を書いた作家であ
68
〈選択肢〉 自意識
名声
2梶井基次郎
⑧堀辰雄
③永井荷風
⑤中島敦
④自尊心
⑥自己存在