第二部基礎編
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3 伊勢物語
おほきさい
<四段〉
むかし、東の五条に大后の宮おはしましめる、西の対に住む人有りけり。それを、本意にはあらで、
心ざしふか
ける人、行きとぶらひけるを、む月の十日ばかりのほどに、ほかにかくれにけり。あ
5りどころは聞けど、人の行き通ふべき所にもあらざりければ、なほ憂しと思ひつとなんありける。又の年
のむ月に、うめの花ざかりに去年を恋ひて行きて、立ちて見、ゐて見見れど、去年に似るべくもあらず。
うち泣きて、あばらなる板敷に月のかたぶくまでふせて、去年を思ひいでてよめる。
月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして
とよみて、夜のほのぐと明くるに、泣くく帰りにけり。
問 和歌の部分以外で、係助詞を含む文節をすべて挙げよ。
問二 傍線1~7を、活用する語の活用語尾、活用する語の
活用語尾の部分、い活用しない語の部分に分けて、傍線部の
数字で答えよ。
問三登場人物は、1
の三名であ
る。文章に出てくる順に従って、文章中の語句を使って
の中を埋めよ。
四 和歌の「月や」 「春や」の「や」について、疑問の係助詞
とする説と、反語の係助詞とする説とがある。 疑問と反語との
それぞれの説に従って、上句を口語訳せよ。ただし、初句「月
やあらぬ」は、「月や昔の月ならぬ」の縮められた表現とする。