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問題2
表 1-1は各元素の原子1個あたりのイ
オン化エネルギーI と電子親和力E の値を
示している。
表1-1
元素
イオン化エネルギー(I)
(×10-18J)
電子親和力 (E)
(×10-19J)
H
21.8
1.2
米国の化学者マリケンは分子の極性を考
える際に、 まず極端な構造として二原子
分子 XZ のイオン構造を考えた。つまり
X+Z- または X-Z+
C
23.4
2.1
0
29.7
5.4
F
33.4
5.6
表中の値は原子1個あたりである
である。 XZ という分子が全体では中性を
保ちながら X+Z-というイオンの対をなす構造になるためには, X原子から電子を奪い,Z 原子
に電子を与えればよい。 その結果放出されるエネルギーは, Ez-Ix+4で与えられる。ここで,
EzはZ原子の電子親和力, Ix は X 原子のイオン化エネルギー, 4はクーロン力による安定化
エネルギーである。 一方, XZ という分子が X-Z+というイオン構造になった場合に放出される
エネルギーは Ex-Iz+4で与えられる。 ここで, ExはX原子の電子親和力, IzはZ原子のイオン
化エネルギーである。 どちらのイオン構造がより安定であるかは, これらの差
xxz=
a
を考えればよい。 xxz が正の場合は, X+Z- がより安定に, xxzが負の場合は, X-Z+ がより安定に
なる。 上式を変形してわかるように, bの値がより大きい原子が分子中で負の電荷を帯びる
と考えられる。マリケンは bの1/2を原子の電気陰性度とした。
構成する原子の電気陰性度の違いから,分子が極性をもつことがある。極性の大きさは,電気
双極子モーメントの大きさによって記述される。 例えば二原子分子であれば, 2つの原子間の距離
を L,それぞれの原子の電荷を+8, -8 とすると,電気双極子モーメントの大きさは Lδ で
ある。電気双極子モーメントの大きさが0の分子を無極性分子という。
(注) ここで定義した電気陰性度は一般にマリケンの電気陰性度と呼ばれるもので, エネルギー
の単位を持つ。電気陰性度には他にポーリングの電気陰性度と呼ばれるものがあり,両者
は近似的には比例関係にある。
ア
a を与えられた記号を用いて表せ。
イ b を E, I を用いて表せ。
ウ酸素原子について bを有効数字3桁で求めよ。
エ
次の二原子分子を極性の大きな順番に左から並べ, 理由とともに記せ。 ただし, 原子間距離
は同じと仮定せよ。
① CH
OH ③ HF (注)これらの分子は必ずしも安定であるとは限らない。
オ HF 分子の電気双極子モーメントの大きさは6.1×10-3°C・m である。 HF の原子間距離を
9.2×10-m とすると,分子の中ではどちらの原子からどちらの原子に電子が何個分移動した
とみなすことができるか。 ただし, 電子の持つ電荷の絶対値は1.6×10-19C とする。有効数字
2桁で答えよ。 答に至る過程も示せ。
カ二酸化炭素分子は無極性であるが,二酸化窒素分子は極性を有する。 それぞれについて理由
を説明せよ。