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論述
□215 植物ホルモン 光受容体(1) 被子植物であるシロイヌナズナは、多くの遺伝
子変異体が作出され, 研究に用いられている。シロイヌナズナにおいて, 光受容体A.
光受容体B,および光受容体Cをコードする3種類の遺伝子にそれぞれ変異が生じた
「実験1~3を行った。 なお、3種類の変異体においては, それぞれ特定の光受容体遺
変異体a, 変異体b, および変異体 c と, 変異が生じていない野生株を用いて次の
伝子のみが変異して, 機能的な光受容体タンパク質を産生することができないが, ゲ
ノムに含まれるほかの遺伝子には変異がないものとする。
[実験1] 白色光下でそれぞれの種子をまいた結果、 変異体 cの発芽率は低かったが、
それ以外の変異体および野生株はほぼ100%の発芽率を示した。 このとき,
変異体 c以外の種子の中で, 野生株と同様に植物ホルモンXの量が増加し、
植物ホルモンXを外から与えると, 変異体を含むすべての植物体が暗室
下でも発芽した。
F
[実験2] 発芽したばかりの幼植物体を暗所で生育させたところ, すべての幼植物体
は明所で生育させたときに比べて, 胚軸 (子葉と幼根との間にできる茎状 9章
の部分)が長く生育した。 一方, 白色光下で生育させると変異体と野
生株はほぼ同じような形態を示したが, 変異体a と変異体では、野生株
に比べて胚軸が長くなった。
〔実験3] 発芽した種子に横から光を照射すると,変異体b以外は,光照射方向に向
かって成長したが, 変異体bでは光の方向に成長することはなかった。 ま
このとき,植物ホルモンYの作用を阻害すると, すべての植物で、光
の方向への成長が抑制された。
(1) 実験1に関連して, 以下の問いに答えよ。
① 文中の植物ホルモンXの名称と光受容体Cの名称をそれぞれ書け。
② 植物ホルモンXと拮抗して, 種子発芽を抑制する植物ホルモンの名称を書け。
③②の種子発芽を抑制する植物ホルモンの生理作用を, 種子発芽の抑制以外に,
1つ挙げよ。
(2) 実験2に関連して, 以下の問いに答えよ。
暗所で生育させた幼植物体(野生株)は,明所で生育させた場合と比べて どの
ような形態の違いを示すか。 胚軸が細長くなること以外の特徴を2つ述べよ。
② 暗所で発芽した幼植物体 (野生株) が示す形態は、 特に地中で発芽する植物に
とって重要な性質である。 地中で胚軸が細長くなることは,これらの植物に
とってどのような利点があると考えらえるか。 30字以内で述べよ。
③光受容体Aの名称, 光受容体Aが活性型になるために吸収する光の色を書け。
(3)実験3に関連して,以下の問いに答えよ。
① 植物が光に向かって成長する性質を何というか。
② 文中の植物ホルモンYの名称を書け。
③①の性質にかかわる光受容体Bの名称を書け。 また, 光受容体Bが活性型に
1
なるために吸収する光の色を書け。
④ 植物が光に向かって成長するしくみを、 「光受容体B」 「植物ホルモンY」「陰
側」という語句を用いて, 120字以内で述べよ。
で
9章 植物の生殖発生環境応答 333
ホルモンが