2 この男なま宮仕へしければ、それをたよりにて、 衛府の佐
ども集まり来にけり。この男のこのかみも衛府の督なりけ
り。その家の前の海のほとりに遊びありきて、「いざ、この
山のかみにありといふ布引の滝見にのぼらむ」と言ひて、
のぼりて見るに、その滝、物よりことなり。 ながさ二十丈、
広さ五丈ばかりなる石のおもて、白絹に岩をつつめらむやう
になむありける。…(中略)…そこなる人にみな滝の歌詠ま
す。かの衛府の督まづ詠む。
わが世をばけふかあすかと待つかひのなみだの滝といづ
れ高けむ
あるじ、次に詠む。
ぬき乱る人こそあるらし白玉のまなくも散るか袖のせば
きに
と詠めりければ、かたへの人、笑ふことにやありけむ、この
歌にめでてやみにけり。
(伊勢物語)
傍線部A・Bの「らむ」の相違を文法的に説明しなさい。
2
傍線部C・Dの「けむ」の相違を文法的に説明しなさい。
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