2 気体分子の運動
気体の圧力や温度を変えたとき,気体分子の熱運動はどのように変化しているのだ
ろうか。この節では,気体全体の状態と、分子の運動との関係について理解しよう。
A 分子運動と圧力
気体の圧力は気体全体の状態を示す巨視的な量である。 その巨視的な
量が,それぞれの気体分子の質量や速度などの微視的な量とどのような
関係になっているのかを考えてみよう。
1辺の長さL〔m〕,体積V[m²](=L°)の立方体の容器に,質量 m[kg]
の分子N個からなる理想気体を入れる。図16ⓐ のように x,y,z軸を
とり,x軸に垂直な壁Sが受ける圧力を考える。 分子は,他の分子とは
衝突せず, 容器の壁に衝突するまでは等速直線運動をしていると仮定す
る。また,分子と壁との衝突は弾性衝突とし,衝突の前後で分子の速度
RI) →p.151
の大きさは変わらないとする。
2
①1回の衝突で壁Sが分子から受ける力積 壁Sに衝突する直前の分
子の速度をv = (vx, vy, vz) とする (同図⑥)。 衝突前後では分子の速度
の大きさは変わらず,壁Sに垂直な成分のみ向きが変わるので,衝突
直後の分子の速度はv=Ux, vy, vz) となる。 よって, 壁Sとの衝突
による分子の運動量の変化,すなわち, 分子が壁Sから受ける力積は
mu-mv=(-2mvx, 0, 0)
→ p.143 (98) 式
となる (同図⑤)。 作用反作用の法則より, 壁S
は分子から反対向きの力積を受けるので,その
大きさは2mvx[N・s] で, 壁と垂直な向き(x軸の正の向き)である。
(14)
Op.143
mv - mv = Ft (98)
5
10
15
20