容器内に閉じ込められた理想気体の膨張収縮について,以下の問に答えよ。ただ
し、気体定数はRとし、単原子分子気体の定積モル比熱はCv=2R で与えられる。
理想気体の断熱膨張を気体分子の運動の観点から考察してみよう。図1のように、
理想気体が断面積Sの円筒状のピストン付き容器に封入されている。 気体が封入さ
れている部分の長さは、ピストンをx軸方向に速度 uで動かすことで,変えること
ができる。気体は単原子分子 N 個からなり,各気体分子は質量mの質点とみなすこ
とができる。ただし、重力の影響は無視する。また,容器の壁面やピストンは断熱材
でできており、表面はなめらかである。 このとき, 以下の問に答えよ。
ピストン
断面積 S
V
y
m
V
u
X
長さ l
図 1
(a) ピストンが静止している状況 (u = 0) を考える。そのときに, 容器内部の気体
と壁面やピストンとの間に熱のやりとりのない状態のことを,以下では断熱状態と
呼ぶ。 このような断熱状態にあるためには, 気体分子とピストンとの衝突は弾性衝
突である必要がある。 なぜ非弾性衝突では断熱状態とみなすことができないかを説
明する以下の文の空欄(ア)~(キ)に当てはまる数式または語句を答えよ。 ただし,空欄
(ア)~(エ)に対しては数式を解答し,空欄(オ)〜(キ)に対しては選択肢の中から最も適切な
語句を選択のうえ,選択肢の番号で解答すること。 解答欄には答のみを記入せよ。
空欄(オ)に対する解答の選択肢:
① 物質量
② 内部エネルギー
空欄(カ)(キ)に対する解答の選択肢:
3 熱量
① 与えられた熱量
② された仕事
③ 与えられた物質量
質量 m,速度(by) の分子がピストンと非弾性衝突をする際のはねかえ
り係数を (0<e<1) とする。 このとき, 衝突後の分子の速度は
であるから、ピストンに衝突した後の分子は運動エネルギーが
(エ) だけ減少する。すなわち、気体の は時間とともに減少するという
論になる。
一方,気体が断熱状態にあるならば,この気体にカ)はゼロであり、またビ
ストンが静止していることから,この気体にキ) もゼロである。従って、熱力
学第一法則により, この気体のオ) は変化しないことになるが,これは先ほど
の結論と矛盾する。 従って, 気体分子がピストンと非弾性衝突する場合は断熱状態
とはみなせない。
以下,間(b)~(e)では、図1のように、ピストンを一定速度で容器内の気体が膨
張する向きにゆっくりと動かすものとする。
(b) 1つの気体分子が速度 (0x, Uy, v2)でピストンに弾性衝突してはねかえった。
このとき, この気体分子がピストンに対してした仕事wをm, vx, u を用いて表
ただし、ピストンの速さは気体分子の速さより十分小さいため, 0x2やひびに
対して²を無視する近似を使うこと。
(c) 時刻t から t+ At までの間に全気体分子がピストンに対してする仕事 AW を, N.,
m,L,u, At および気体分子の速さの2乗の平均を用いて表せ。 ただし,ピス
トンの運動は十分遅く, また, 考えている時間間隔 4t は十分短いため,その間,
はより十分大きい値をとり続ける。さらに,時間間隔 4t の間に、ピストン
や容器壁面との衝突以外の要因で気体分子の速度が変化することはないとし,気体
が封入されている部分の長さもしであり続けると近似せよ。 また, 全気体分子に対
して2,22, 22 平均したものをそれぞれx, y2, 2² と表し,
V z
Vz
2
v²=v²² +v₁²+v₁²³ = 3v,²
が成り立つとして良い。
(d)問 (c) の場合の容器内の気体の圧力を N,m,S,L,
定したものと同じ近似を使って解答すること。 要
(e) 時刻t から + At までの間に, 容器内の気体の温度がTからT + AT に変化し
体積がVから V + AVに変化した
AT
問 (c)で仮
を用いて表せ。
: を T, V を用いて表せ。
AV
でも気体がする仕事を考える際に圧力一定として考えていませんか