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発展例題15
分子進化
次の文章を読み, 下の各問いに答えよ。
異なる生物種間で相同なタンパク質のアミノ酸配列を比較することによって, それ
らの系統関係や,生物が共通の祖先から分かれた年代を推定できる。下表は,ヒト,
ウマ,マグロ,酵母の4種におけるシトクロムでのアミノ酸の置換数(異なる数) をま
とめたものである。たとえば,104個のアミノ酸からなるヒトのシトクロムcと比較
すると,ウマのシトクロムcは12か所で異なっている。 生物の進化過程において,共
通の祖先は同一のアミノ酸配列からなるタンパク質をもっており,またシトクロムc
の進化速度はその過程で一定であったと仮定す
れば,共通の祖先から分岐した年代が古いほど
アミノ酸の違いが大きいと考えられる。この違
いの数を類縁関係の距離とみなすことにより分
子系統樹をつくることができ,さらに生物種が
分岐した年代を化石などの証拠から推定して,
進化の速度を求めることも可能となる。
DNAの塩基配列の変化には,置換、挿入、欠失などの種類があるが, さらに塩基置
換には,アミノ酸の変化を伴わない置換(同義置換)とアミノ酸の変化を伴う置換(非
同義置換)の2種類が存在する。 ある2種の哺乳類間で,さまざまなタンパク質の
DNAの塩基配列を比較した結果, すべてのタンパク質の遺伝子において同義置換の
生じる速度は非同義置換の速度より大きいことがわかった。
問1. 表の結果から右図のような分子系統樹を作成
することができる。 次の (1)~(4) に答えよ。
ヒト
(1) ヒトとのアミノ酸の置換数をもとに, 右図の
X~Zの生物名を記せ。
右図の系統間の距離 a ~ c は, それぞれのタ
ンパク質間のアミノ酸の置換数から計算できる。
たとえば,図中のaの長さは,ヒトと種Xの共通の祖先のタンパク質 (分岐点1 )
からの置換数として求められる。 表1の結果から距離aの値を求めよ。 また図中
bの長さは,ヒト-種Y間の置換数および種 X-種Y間の置換数の平均値から得
られる。距離bの値を求め, さらに同様に考えて距離cの値を求めよ。
タンパク質の進化速度を、 1年間にペプチド鎖中のある1か所のアミノ酸に置
換が生じる割合と定義する。 距離aの値からシトクロムcの進化速度を計算せよ。
また、計算式も示せ。 なお,ヒトとウマの共通の祖先は,約8000万年前に分かれ
たとする。
ヒ
ト
ウ マ
マグロ
酵母
0
12
20
21
45
47
0
ヒトウ ママグロ 酵母
a
a
b-a.
分岐点 1
X
19
46
c-b.
Z