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で
志望
結果的に、私は、第一志望の国立大学に落ちた。つまり、浪人をするか、どうにか合格
していた第二志望の私立大学へ進学するか、選ばなければならなくなった。
担任の先生、母、私。狭い部屋だった。第一志望を目指し、浪人。二志望に、進学 -
三人で面談をしていたとき、私の目の前にはそんな二つの選択肢があった。
両親や、当時の担任の先生は、浪人を現実的に考えてもいいのではないか、と言った。
もう一年間努力をすれば届かないわけではないかもしれないし、単純に金銭的な問題もあ
った。そのあたりのことを考慮しても、一年間浪人をして、第一志望の大学をもう一度目
指すことが正しい選択なのではないか、という話になった。
あのとき私は、キャスター付きの椅子に座っていた。だからだろうか、心の奥底で決め
ていた、いつか言おう、いつか言おうと考えていた言葉が、バランスを失ってずるりと口 1
からこぼれ出てしまった。
「浪人はしたくありません。」
なぜなら、と続けつつ、私は唾を飲み込んだ。
「書きたい話がたくさんあるからです。もう一年なんて我慢できません。」
自分の声が自分の耳に入ってきたとき、私は、なんて寒くて、若くて、青くて痛々しく 1
て、勘違いに満ちた発言だろうと思った。今思い出しても、恥ずかしくてたまらない。だ
十八歳の選択
5
語句
2 「バランスを失ってず
るりと口からこぼれ出
てしまった。」とは、
どのようなことか、言
い換えてみよう。
世界を跨ぐ
とある
考慮(遠慮・配慮)
勘違い(勘案・勘定)