のだ。今の私たちと同じように――。石内氏の言葉は、そんなあたりまえのこと
に気づかせてくれた。私は、結局は歴史史料、あるいは自分がものを書くときの
資料としてしか、あの洋服たちを見ていなかったことを、改めて思い知ったので
あっ
「女性ならでは」という言葉を、私は極力使いたくないと思っている。けれど
もこの写真に関して言えば、やはり女性だから撮れたものではないかと思う。
石内氏が撮った写真からは、服というものに対する愛情が伝わってくる。きれ
いな布を見たときの、触れてみたいという思い。 装うことへの憧れ。祖母や母た
ちが輝いて見えた、よそ行きの着物やワンピースの記憶―。原爆の閃光を浴び、
思いがけずその織り目に歴史を刻んでしまった洋服たちを、史料として見る前に、
女性たちが大切に着た服として見る視点が、この写真集にはある。
残酷な歴史を物語る史料としての陰影がいったん消され、服が本来持っていた
美しさがよみがえったとき、それらを着ていた人たちの気配が、歴史の闇の中か
ら立ち上がってくる。そのとき初めて、彼女たちが悲惨な死を死んだという事実
だけでなく、 死の瞬間まで、丁寧に営まれていた日常があったのだということが
せんこう
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