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論理
(学問)
読書力
さいとう たかし
齋藤孝
.
I
テ
経験を積み重ねる読書のしかたとは
具体例と筆者の意見を選別しよう
攻略のプロセス1・2を通して、《効果的な読書のしかた》を《具体例と意見を選別しながら読み取ろう。
(注)
読書を必要ないとする意見の根拠として、読書をするよりも体験することが大事だという論がある。こ
れは、根拠のない論だ。体験することは、読書することとまったく矛盾しない。 本を読む習慣をもってい
る人間が多くの体験をすることは、まったく難しくはない。むしろいろいろな体験をする動機づけを読書
から得ることがある。たとえば、藤原新也のアジアホウロウの本を読んで、アジアを旅したくなる若者が
いる。本に誘われて旅をするというのはよくあることだ。あるいはコウコガクの本を読み、実際に遺跡掘
りの手伝いに行く者もある。 読書がきっかけとなって体験する世界は広がってくる。
それ以上に重要なことは、読書を通じて、自分の体験の意味が確認されるということだ。本を読んでい
「自分と同じ考えの人がここにもいた」という気持ちを味わうことは多い。まったく生まれも育ちも違う
のに、同じ考えをもっている人に出会うと、自分の考えが肯定される気がする。自分ではぼんやりとしか
わからなかった自分の体験の意味が、読書によってはっきりとすることがある。 「あれはこういう意味だっ10
(注2)ふ
たのか」と腑に落ちることが、私は読書を通じてたくさんあった。
ああ刀す