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P
(注2)
(注1)
今は昔、横川の源信僧都は大和の国、葛下の覇の人なり。幼くして比叡の山に登りて、学
(注5) みはつかう
(注3) かくとやり
(注4) おほきない
問してやむごとなき学生になりにければ、三条の大后の宮の御八講に召されにけり。 八講果
のち、賜はりたりける捧げ物の物どもを、少し分かちて、大和の国にある母のもとに、「か
(注6)
くなむ后の宮の御講に参りて賜はりたる。始めたる物なれば、まづ見せ奉るなり。」 とてや
かごと
おうな
ご
5 たれば、母の返り事にいはく、「おこせ給へる物どもは喜びて賜はりぬ。かくやむごとなき
学生になり給へるは、限りなく喜び申す。ただし、このやうの御八講に参りなどしてあるき
給ふは、法師になし聞こえし本意にはあらず。 そこにはめでたく思はるらめども、幅の心に
は違ひにたり。幅の思ひしことは、「女子はあまたあれども、男子はそこ一人なり。それを、
元服をもせしめずして、比叡の山に上せければ、学問して身の才よくありて、多武峰の聖
のやうに貴くて、幅の後世をも救ひ給へ。」と思ひしなり。それに、かく名僧にて花やかに
あるき給はむは、本意に違ふことなり。 われ年老いぬ。 「生きたらむほどに聖人にしておはせ
むを心安く見置きて死な 。」とこそ思ひしか。」と書きたり。
しやう
(注8)
⑥みやうぞう
(注)
横川
比叡山三塔の一つで、横川中堂を中心とする地域。
2葛下の郡現在の奈良県にあった郡の名。
4 三条の大后の宮 朱雀天皇の第一皇女、昌子内親王をさす。
学僧。
6 始めたる物初めていただいたもの。
後世をも救ひ「後世」は来世。 人を往生に導くこと。
【5点】
@
3
2
@
学生
5 御八講
法華八講。 法華経八巻を四日間で講読する法会。
多武の緑の聖人―平安中期の僧、増賀のこと。
「知識の問題」
語句チェック
問一 二重傍線部の意味を書け。
〇文法チェック
問二本文の空欄を補うのに最も適切な終助詞を、次から選べ。
イ なむ
(てしがな
① もがな
問三語句 傍線部 ① とあるが、源信が成人する前に出家したことがわか
る記述を二十字程度で抜き出し、その初めと終わりの三字ずつを書け。
問四解釈 傍線部②・③を現代語訳せよ。
【6点】
問五文脈 傍線部④・⑤の「そこ」がさすものを、本文中の語で書け。
問六傍線部⑥について、次の問いに答えよ。
1
内容「名僧」の説明として最も適切なものを、 次から選べ。
⑦徳の高い僧。
M 母を慈しむ僧。
(地位の高い僧。
① 評判の高い僧。
信仰に篤い。
○
ほっけはっこう
②
11134
ほりえ
【6点】
おうじょう
●副助詞・終助詞・
間投助詞
〇願望の終助詞
ばや・・・未然形接続。 自己の
願望を示す。
む…未然形接続。 他に対
する願望を示す。
てしがなにしがな・しが・
しがなてしが・にしが
・・・運用形接続。自己の
願望を示す。
もがながな・・・体言や形容
詞・助詞などに接続。
出現・実現が難しい自
己の願望を示す。
内容を確認しよう
●本文中の語句を補おう
(いただいた捧げ物を)やる
限りなく喜び申す
ただし、
多武峰の聖人のやうに貴くて
本意
にて花やかにある(く)
本意に違ふ
知識の復習をしよう
~接続助詞~
問 次の傍線部の文法的意味を、後から選べ。
【2点】
比叡の山に上せければ、
[9行目]
⑦ 順接仮定条件
逆接仮定条件
(⑦) 順接確定条件
エ 逆接確定条件
単純接続
すら
〇文章展開図
【源信僧都】
【母】の返り事
2 内容「名僧」と対照的な言葉を、本文から二字で抜き出して書け。
【5点】
問七読解母は、比叡山に上った源信にはどうなってほしいと思ってい
たのか。三十字以内で説明せよ。
【9点】
文法を習得しよう (助詞 (3)
問1 空欄a~dにあてはまる副助詞を、次の語群
から選んで書け。
【各1点】
(ばかり・し・しも・さへ・のみ・だに)
副助詞
①類推(~さえ)
②最小限の限定(せめて~だけでも)
類推(~さえ)
添加(~までも)
①限定(~だけ) ②強調(ただ〜ばかり)
①程度(~ほどくらい) 2限定(~だけ)
【各1点】
問2 次の文を現代語訳せよ。
○ばかりの光だになし。
に呼ばれる。