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[35] 気体のヨウ素は、水素と次のように反応し、 気体のヨウ化水素が生じる。
H2 + I2 2HI ...1
水素 1.0molが反応するとき, 式 ① の正反応の活性化エネルギーは、触媒を用いない
場合は 178kJ だが, 白金触媒を用いると 58 kJ になる。 また, 気体のヨウ化水素 1.0 mol
が気体のヨウ素と水素から生じるときの反応熱は,温度によらず 4.5kJである。
25℃での固体のヨウ素の水への溶解熱は 23 kJ/mol である。 ヨウ素の水への溶解度
は 1.0×10mol/Lとあまり溶けないが, ヨウ化カリウム水溶液にはよく溶ける。 これ
は溶液中のヨウ化物イオンと次のように反応し, 三ヨウ化物イオンが生じるためである。
I + I ℓ Is¯ ...2
この反応は可逆反応であり, 25℃での平衡定数Kは 1.0 × 10° L/mol である。 三ヨウ
化物イオンが存在するヨウ化カリウム水溶液は, デンプンの呈色反応に利用される。
(1) 水素 2.0 mol とヨウ素 1.0 mol を密閉容器に封入し, 高温で一定に保つと, 式①の反
応が起こった。 密閉容器内の物質は, 全て気体である。
(i) ヨウ素の物質量は図1のように変化した。 図1 に 水素の物質量の変化を実線
(-), ヨウ化水素の物質量の変化を破線 (-.-.-.-)で記せ。
(Ⅱ) 正反応の反応速度は図2のように変化した。 図2に, 逆反応の反応速度の概略を
実線で,正反応と逆反応を考慮した見かけの反応速度の概略を破線で示せ。
(mol)
() 平衡状態において,
次の操作を行った。 操
作直後の正反応の反応
速度は, 操作直前と比
較して,どのように変
化すると考えられる
か。 「速くなる」, 「遅
0.0%
0
時間
くなる」 「変化しない」
図1 式 ① の反応における
のどれかで答えよ。 ま
物質量の時間的変化
また,逆反応の反応速度についても同様に答えよ。
(a) 容器の体積はそのままで, 温度を下げる。
(b) 温度はそのままで, 容器の体積を小さくする。
(c) 容器の体積と温度はそのままで, 触媒として白金を加える。
(2) 触媒を用いない場合の式 ① の逆反応の活性化エネルギー [kJ]を整数で求めよ。
(3) ヨウ素, ヨウ化物イオン, 三ヨウ化物イオンの平衡状態でのモル濃度 [mol/L] をそ
れぞれ[I2], [I-], [I3-] とし, 式 ② の平衡定数K を表す式を記せ。
★ (4) 0.20 mol/L ヨウ化カリウム水溶液100mLに固体のヨウ素 4.0gを加え, 25℃で平
状態にした。 平衡状態における次の量を有効数字2桁で求めよ。 ヨウ素が溶けても
水溶液の体積は変化しないとする。
原子量I=127
物質量
2.0g
1.6
物 12
0.8g
0.4
16
120 第7部 化学反応とエネルギー
平衡状態
MUTIHKUKU
反応速度
正反応の
反応速度
平衡状態
時間
図 2 式 ① の反応における
反応速度の時間的変化
(i) 水溶液中のK+, I'. I2. Is- それぞれのモル濃度 [mol/L]
(Ⅱ)水溶液中に残った固体のヨウ素の質量 [g]
[36] 図1に示す温度を一定に保つことのできる体積一定の容
器中で, 式 ① で示される反応を行った。 全ての成分は気体状態
にあり, 理想気体とみなす。
H2 + I 2HI ... ①
容器中の各成分の濃度を測り, 各測定時刻における
[HI] ²
[H2] [I]
ヨウ化水素が生成する右方向の反応 (正反応) は発熱反応であ
る。 水素 H2, ヨウ素 I2, ヨウ化水素 HI のモル濃度をそれぞれ [H2], [I2], [HI] と表す
と, 式 ① の正反応の反応速度 2 は式②で,逆反応の反応速度 2 は式 ③ で表される。
=ki [H2] [I2]
2=k2 [HI] ...③
k1,k2 は温度のみに依存する定数 (反応速度定数) である。
[HI]2
[Hz] [I2]
40
30
H2
I2
HI
20
(同志社大)
変更ならびに気体を容器に入れるのに要する時間は無視できるものとする。 数値は全て
有効数字2桁で答えよ。 2 = 1.41,√3=1.73
実験 11.0 molのH2と3.0molのI2 を容器に入
れて温度 T で反応させると40秒後には
容器内の各成分の濃度が変化しなくなり
化学平衡に到達した。 そこに温度 T で 2.0
mol の H2 を補給して再び化学平衡に到達
するまで反応させた。 図2はこの実験にお
[HI]?
ける
の値の変化を示したもので
[H2] [I2]
ある。
10
弁 反応容器
図 1
の値を求めた。 温度の
0 10 20 30 40 50 60 70 80
時間 [s]
図2
この実験結果から温度 T, における式 ① で示される反応の平衡定数の値が分か
る。これ以降の問題の解答に必要な場合は、図2のグラフから求めた温度 T に
おける平衡定数の値を用いよ。
(1) 反応開始後 40秒から60秒の間のある時点において, 容器内の H2 の物質量が0.8
mol であった。 このときの容器内のHI の物質量を求めよ。
(2) 図2の点Aにおける容器内の圧力をpとしたとき, 点B, 点Cのそれぞれにおける
容器内の圧力を』 を用いた式で表せ。
(3) 化学平衡状態に達するまでの間, 反応の進行に伴って, 式 ② に示される正反応速度
は減少し, 式 ③ に示される逆反応速度は増加する。 化学平衡状態に達すると、正反応
速度と逆反応速度は等しくなり、 みかけの反応速度はゼロになる。 温度 T における
式①の正反応の反応速度定数k=48L/(mol's) である。 温度 T, における逆反応の
§ 20 化学平衡と平衡定数 121
第7部