かみ
神無月のころ
ごくるすの
神無月のころ、栗栖野といふ所を過ぎて、
はベ
はる
ある山里に尋ね入ること侍りしに、遥かな
苔の細道をふみわけて、心細く住みなし
いほり
しづく
たる庵あり。 木の葉に埋もるる懸樋の雫な
Q あかだな
らでは、つゆおとなふものなし。 閼伽棚に
かうじ
菊・紅葉など折り散らしたる、さすがに住
む人のあればなるべし。
2
かくてもあられけるよと、あはれに見るほどに、 かなたの庭に、大きな
る柑子の木の枝もたわわになりたるが、まはりをきびしく囲ひたりしこ
そ、少しことさめて、 この木なからましかばと覚えしか。
(第十一段)
奈良絵本徒然草・十一段
⑤
柑読に
2
③ ②