いけない。物質文明、技術文明は確かに進歩してきたが、それは、言語を使った
学習と教育、記録による伝達によってどんどん蓄積されてきたからであって、
人一人の人間の脳が、毎世代、石器時代よりも進化して賢くなることによって進
歩してきたのではない。
それが何より証拠には、人類史における伝統的な生計活動である狩猟と採集で
現在も暮らしを立てている地域で生まれた人々でも、子供の頃から教育すれば、
パイロットにも脳外科医にもなる。一方、技術文明の恩恵を十二分に受けて暮ら
している私たちのうち、コンピューターや飛行機を自分で造れる人が何人いるだ
ろうか。私が飛行機に乗り、コンピューターを操って、百年前の人々にはできな
かったような仕事をしても、それは、私自身の脳が百年前の人々よりも優れてい
るからではないのである。
1
10
9可塑性
およそ五万年前までにできあがった、非常に可塑性に富む人類の脳が、一致団
結して知恵を蓄積してきた結果、こんな技術や社会ができた。しかし、この技術
内容積と生活環境の改変は、 あまりにも急速に起こったため、 類は、自らの脳
しまった。私たちは、理性によって原子力やロケットを利用するすべを開発した
が、体や感覚はそんなものにはついていけないのである。
自在に
できる
?
「こん
とは、
未知への人間の挑戦と、その結果獲得した技術はすばらしい。しかし、私たち
10
は、ラップトップを抱えた「石器人」でもあるのだと、もう一度謙虚に認識する
必要があるだろう。
10ラップトッ
top 小型軽
型パソコン
改変 変更