次の文章を読んで、後の各問い (問一〜六)に答えよ。
これも今となっては昔のことだが
たんごのぜんじ たかしなとしひら
これも今は昔、丹後前司高階俊平といふ者ありけり。後には法師に
(注1)
つかさ
なりて、丹後入道とてぞありける。それが弟にて、司もなくてある者
つくし
(注2)
く渡りける唐人の、算いみじく置くありけり。
ありけり。 それが主の供に下りて、筑紫にありける程に、あたらし
それにあひて、「算
置く事ならはん」と言ひけれども、初めは心にも入れで、教へざりけ
るを、すこし置かせてみて、「いみじく算置きつべかりけり。 日本
にありては何にかせん。日本に算置く道、いとしもかしこからぬ所な
Đ
我に具して唐に渡らんと言はば、教へん」と言ひければ、「よ
(注3)
くだに教へてその道にかしこくだにもなりなば、言はんにこそ従はめ。
(注4)
唐に渡りても、用ゐられてだにありぬべくは、言はんに従ひて、唐に
も具せられて行かん」なんどことよく言ひければ、それになんひか
れて、心に入れて教へける。
うじしゅういものがたり
(『宇治拾遺物語』による)
司————官職。
2算――易経の占いに用いる木の道具で、それを使って占う。
言はんにこそ従はめ言うとおりに従いましょう。
用ゐられてだにありぬべくはせめて役人として登用されるならば。
ずれてい
3
とても悪い