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発展 緩衝液とpHの変化
緩衝液である酢酸と酢酸ナトリウムの混合溶液を希釈するとpHはどのよう
に変化するだろうか。
●酢酸の電離平衡と希釈
酢酸の電離平衡の式 (64) (179)は、酢酸水溶液について表したものであるが、
酢酸ナトリウムが加わったときでも成立する。 ただし, 平衡移動のために、各成
分の濃度が変わっている
[CH,COO] [H]
[CH, COOH]
=K.
0
酢酸に十分な量の酢酸ナトリウムを加えた水溶液では, [CH,COOH] は加えた
酢酸の濃度c. [mol/L] にほぼ等しい。 また, [CH, COO]は酢酸ナトリウムの
. [mol/L] にほぼ等しい。 式から、混合水溶液の水素イオン濃度は次の式
になる。
[CH, COOH]
[H'] =
[CHCOO
K₁ = K
0
式より、緩衝液を希釈しても, [CH,COOH] と [CHCOO] が同じだけ小
さくなるため,pHは変わらないことがわかる。また, [CHCOOH]:[CH,Coo
が 1:1 から 1:10 に変わっても, pHの変化はわずか1であることもわかる
例題 A 緩衝液とpHの変化
0.100 mol の酢酸と 0.100 mol の酢酸ナトリウムを含む混合水溶液
1.0L がある。これに, 0.010 molの塩化水素を吹き込み溶かした。 水
溶液のpHはどのように変化したか。 小数第2位まで求めたpHの
を用いて答えよ。 ただし, 酢酸の電離定数 K = 2.7 x 10mol/L
10g102.7 = 0.43, logio 3.3 0.52 とする。
解
水溶液中で酢酸ナトリウムは完全に電離し CH3COO が多量にあ
あるため酢酸の電離はほとんど起こっていない。
CH3COONa
CH3COO + Na+
CH3COOH CH3COO + H+
したがって,水溶液中の [CH3COOH] = [CH3COO] = 0.100mol/L
とみなせるので
[CH3COOH]
[H+] =
K₁ = K₁ pH = -logio (2.7 x 10 ) = 4.57
[CH,COO]
ここに, 0.010 molの塩化水素を吹き込むと、CH3COO
H*
0.11
0.091
CH3COOH の反応が起き, [CH, COOH] = 0.110mol/L, [CH3COO
= 0.090 mol/Lになるから、
[H'] =
[CH3COOH]
K = 3.3 × 10 mol/L
[CH3COO]
pH = -logio (3.3 × 10 ) = 4.48
① 添字のs は, 塩 (salt) を意味する。
答 4.57 から 4.4S に変化し
②pH = -logio K + logio c
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