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プラトンの立場に対して、アリストテレスは自己実現としての人間の幸福を別の仕方で論じている。 アリ
ストテレスの幸福についての記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 人間の幸福とは苦痛によって乱されることのない魂の平安であり、これを実現するには、公的生活から
離れ、隠れて生きるべきである。
② 人間の幸福とは肉体という年獄から魂が解放されることであり、これを実現するには、魂に調和と秩序
をもたらす音楽や数学に専念するべきである。
③ 人間の幸福とは自己自身への内省を通して. 宇宙の理と通じ合うことにあり、そのためには自らの運命
を心静かに受け入れることが大切である。
④人間の幸福とは行為のうちに実現しうる最高の善であり、これを実現するためには、よき習慣づけによ
る倫理的徳の習得が不可欠である。
<2003年追試>
2 ヘレニズム時代になって提唱された哲学・思想についての記述として最も適当なものを、次の①~④の
うちから一つ選べ。
① 戦乱により崩壊したポリスに縛られることなく、個人の内面に目を向け、 人間の幸福は魂の自由と平安
にある, とする考え方。
②知恵のを具えた哲学者が、善のイデアを基準にして国家を正しく治めることにより、国家の正義が実
現されるという考え方。
③ 魂の徳が何であるか,その定義を知ることによって、 徳を具えると同時に幸福な人になりうるという
考え方。
④ 自然現象の根底に存在する不変の原理であるアルケーを,ロゴスによって探求するべきだとする考え
方。
<2007年追試 >
21 理想的な生き方を考察したヘレニズムの思想家についての説明として最も適当なものを、次の①~④の
うちから一つ選べ。
① エピクロスは、あらゆる苦痛や精神的な不安などを取り除いた魂の状態こそが、 幸福であると考えた。
②エピクロスは、 快楽主義の立場から、いかなる快楽でも可能な限り追求すべきであると考えた。
③ ストア派の人々は、人間の情念と自然の理法が完全に一致していることを見て取り, 情念に従って生き
るべきだと考えた。
④ ストア派の人々は、いかなる考えについても根拠を疑うことは可能であり、 あらゆる判断を保留するこ
とにより、 魂の平安を得られると考えた。
<2021年本試〉
2 次の文章は ストア派の理法の考え方を発展させたキケロが,法の位置づけについて述べたものである。
その内容の説明として最も適当なものを下の①~④のうちから一つ選べ。
まるで盗賊が寄り合って制定した規則同様に、法律という名とは関わりのない多くの有害無益な規則が諸
国に制定されているのは、驚いたことだ。 例えば、 無知で無経験な人間が薬の代わりに致死の毒を処方した
場合、それは医者の処方であるとはとうてい言えないように、 国家の場合にも、たとえ国民が有害な規則を
受け入れたとしても、それは法律の名には値しないのだ。 したがって、法律とは正邪の区別にほかならず。
同時にまた. 万物の根源であるあの太古以来の自然というものの表現でもあるのだ。 そして、悪人を罰し善人
を守護する任を帯びた, 人の世の法律は、この自然を範として定められたものだ。 (『法律について」より)
① 法律は自然に従って定められる限り、善人と悪人を公正に裁くことができる。 というのも, 太古以来
善人の総意によって、 自然そのものが管理され、 形作られてきたからである。
② 法律は自然に従って定められる限り、善悪と正邪を誤りなく区別することができる。 なぜなら、法が模
範とすべき原初からの自然は、 あらゆるものの根源でもあるからである。
③ 法律は自然に従って定められただけでは、善人と悪人を公正に裁くことはできない。 というのも、法律
を用いるのは国家であり、 それを構成する国民は自然とは関わりがないからである。
④ 法律は自然に従って定められただけでは、善悪と正邪を誤りなく区別することはできない。なぜなら、
豊富な知識や経験に基づかなければ、法律は有害なものともなり得るからである。
<2016年本試〉
「人間の本性を踏まえた上で、人はどう振る舞うべきだと考えられてきたのか」 に関して AとBは図書
~c]に入る語句の組
館で見付けた次の資料1と資料2を比べ、後のメモを作成した。 メモ中の
合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
資料1 プラトン 「国家」 で紹介されるソフィストの思想
全ての者の自然本性は、他人より多く持とうと欲張ることを書きこととして本来追及するものなのだが、
それが法によって力ずくで平等の尊重へと、脇へ逸らされているのだ。
資料2 キケロ 「義務について」より
他人の不利益によって自分の利益を増すことは自然に反する。 我々が自己利益のために他人から
略奪し他人を害するようになるなら。 社会 これが自然に最も即しているが崩壊することは必然だ。
メモ
資料1によれば、ソフィストは a を重視し、これが社会的に抑圧されているとする。 先生による
と資料2の背景にも、 自然の掟を人為的な法や慣習より重視するという資料1 との共通点があるとのこと
だが, 資料2では他者を犠牲にしたbの追求は、自然に反する結果を招くとされる。 さらに調べた
ところ、 資料2を書いたキケロの思想はストア派の主張を汲んでおりこれはc の一つの源流とさ
れているということを学んだ。
①a
人間の欲求
b
自己の利益
C 功利主義
②a
人間の欲求
b
自己の利益
C
自然法思想
(3
人間の欲求
b
社会の利益
C
自然法思想
(4)
a 平等の追求
b
自己の利益
C 功利主義
⑤ a 平等の追求
⑥
b
社会の利益
C
功利主義
a 平等の追求
b 社会の利益
自然法思想
<2023年本試>
2 古代ギリシアの哲学者についての説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから選べ。
① ソクラテスは、魂を何より大切にせよと説き, アテネ市民の魂をできるだけ優れたものにするために.
その当時に知者とされた人々の考えを批判的に吟味し、その成果を著作として残した。
プロタゴラスは人間の感覚や判断を超えた普遍的真理を探究し、 ノモス的なものに対する人々の関心
を増大させた。 言葉の技術を用いた彼の活動は、 ソクラテスに大きな影響を与えた。
③プラトンはソクラテスを主人公とする多くの対話篇を残した。 そこでは、真理を求めたソクラテスの
精神が継承されており、善く生きるための探究を担うのは理性であるとされた。
④ プロティノスは, 神秘主義的立場からプラトンのイデア論に独自の解釈を加えて発展させ. 万物には善
と悪との二つの根源があり、これらの根源からの流出により世界が構成されると説いた。 <2020年追試 >
2 次のア~ウは古代ギリシアの古典や思想家についての説明である。 その正誤の組合せとして正しいものを.
後の①~⑧ のうちから一つ選べ。
ア 「イリアス」と「オデュッセイア」においては, 神々が運命を司り。 世界の様々な事象を引き起こすと
いう神話的な世界観が展開されている。
イゴルギアスは「あらぬものについて」 で, あらゆる物事について、 実際にありはしない あっても理解
できないし、理解できたとしても言葉で伝えられないと論じ、 議論によって得られる真理に疑いのまなざ
しを向けた。
ウエピクロスは、 あらゆる現象は原子の働きに基づくという知が, 人間を. 迷信や死への恐怖から解放し
得ると考えた。
①ア正
正
ウ正
③ ア正
ウ正
イ誤
イ正 ウ 正 ⑥ ア
イ誤 ウ正 ⑧ ア誤
② ア正 イ正 ウ誤
ア 正 イ誤 ウ誤
イ正 ウ
イ誤 ウ
<2022年改〉
⑤ ア
⑦ア誤
ギリシア思想
第2章 ギリシア思想- 23