だいまの
今井四郎、木曽殿、主従二騎に
おぼえぬ鎧が、今日は重うなったるぞや。」
今井四郎申しけるは、「御身もいまだ疲れ
おんま
さうら
させたまはず、御馬も弱り候はず。何によ
きせなが
つてか、一領の御着背長を重うはおぼしめ
かた
おんせい
し候ふべき。それは、御方に御勢が候はね
かねひら
ば、臆病でこそさはおぼしめし候へ。兼平
いちにん
せんぎ
ふせ
一人候ふとも、余の武者千騎とおぼしめせ。
矢七つ八つ候へば、しばらく防き矢つかま
つらん。あれに見え候ふ、粟津の松原と申
2あはづ
す、あの松の中で御自害候へ。」とて、打つ
て行くほどに、また新手の武者、五十騎ば
あらて
かり出で来たり。「君はあの松原へ入らせ
軍記物語
平家物語