〈古典〉
(神奈川県)
4 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
おい
としごろ
やざゑもん
弥左ヱ門といふ農夫、老たる双親年頃のねがひにまかせ、秋のはじめ
さんけい
信州善光寺へ参詣させけり。さてある日用ありて二里ばかりの所へゆき
あやまち
いだ
たる留守、隣家の者過て火を出したちまち軒にうつりければ、②弥左ヱ門
にげ
たすか
はせかへ
が妻二人の小児をつれて逃去り、命一ツを助りたるのみ、家財はのこらず目
前の姻となりぬ。弥左ヱ門は村に火災ありときって走りしに、今朝出し家
は灰となりてたゞ妻子の无をよろこぶのみ。此夫婦心正直にして親にも孝
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この