あか
目標 文中の付属語を的確に読み取ることができるようになろう。
せっつ
の正確な訳ができるようになろう。
今は昔、摂津の国のほとりより、盗みせむがために京に上りける男の、日のいまだ
しゅじゃくかた
明かりければ、門の下に立ち隠れて立てりけるに、 "朱雀の方に人しげく行きければ、人の
まるまでと思ひて、門の下に待ち立てりけるに、"山城の方より人どものあまた来たる音の
うはこし
しければ、それに見えじと思ひて、円の上層にやはらかかつり登りたりけるに、見れば、
火ほのかにともしたり。
まくらがみ
れんじ
盗人、「あやし。」と思ひて、子よりのぞきければ、若き女の、死にて臥したるあり。
おうな
しらが
その枕上に火をともして、 1 いみじく老いたるの自白きが、その死人の枕上にゐて、
死人の愛をかなぐり抜き取るなりけり。
「己は、己は。」
盗人これを見るに、心も得ねば、「④これはもし鬼にやあらむ。」 と思ひて恐ろしけれども、
「もし死人にてもある、脅して試みむ。」 と思ひて、 やはら戸を開けて、刀を抜きて、
と言ひて走り寄りければ、、 手惑ひをして、手を摺りてへば、盗人、
「こ」は何ぞの嫗のかくはしゐたるぞ。」
と間ひければ、、
己があるじにておはしましつる人の失せたまへるをあつかふ人のなければ、かくて
おほかみたけ
きたてまつりたるなり。 その御髪の丈に余りて長ければ、それを抜き取りてにせむとて
かつら
抜くなり。助けたまへ。」