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攻略のプロセス3百字要で
④それは、固有名詞の暴力を言いあてた話であって、名づけさ
をよびおこしていたはずの岩も、
なにげなくテレビをつけてみて、番組の途中から惹きつけられて見ることがよくあるものだ。 先日も
そういうことがあった。海中散歩のような番組だった。 その終わりのほうで、 番組の出演者であるハイユ
ウのKが担当のディレクターと磯辺で話をするところがあって、そのときのKの半ば怒っている話がおも
しろかった。 ディレクター氏に文句をつけているのだ。
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亀岩となれば、もう亀岩でしかない。
あんたは岩でも何でも、すぐに名前をつけちまうんだから。あれだけは止してくれないかな。
たとえば、亀岩なんて名をつけるだろ。 そりゃ、その岩は言われてみれば亀に見えるさ。だけどね、
俺は俺で、その岩にいろんなイメージをもってるんだ。 それを「亀岩」と呼ばれてしまうと、もう、亀以外
のものに見えなくなっちまう。 あれ、すごく困るんだよな。やめてほしいんだよな。
芭蕉は曽良の句から固有名詞を省いた。 奈良という地名は濃いイメージをもって
⑥いて、うまく使えば強力な力になるが、逆に
この場合は、ふるき都という言葉で古雅の感じをおくにとどめて、そのほか
は、読者の想像力のはたらきに委ねたのだろう。
固有名詞というものの、この場合には暴力をぴたりと言いあてている話だった。ディレクター氏が
亀岩と名づけさえしなければ、その岩はKの目に、さまざまなイメージをよびおこしていたはずである。 10
おそらく一つのイメージではあるまい。 海のアれるときのその岩、おだやかな時間のその岩、朝方のその
岩 ラクジツの海に立つその岩、それぞれが、見る者の心と、そのときどきの何かを通わせたであろう。
だが、亀岩となったら、もう亀岩でしかない。
は地名でも人名でも、大きな力をもつものである。
3
百字要旨
芭蕉「おくのほそ道』の旅の終わりに近く、加賀の山中温泉で、 北枝、曽良と三人で「山中三吟」と呼
ばれる歌仙を巻いている。これについては尾形氏の「歌仙の世界」が詳細に検討を加えていて実におもし15
ろいのだが、そのなかに、曽良の付けた句から芭蕉が固有名詞を省いているところがある。 「花の香に奈
良の都の町作り」が曽良の句であるが、芭蕉はこれを、「花の香はふるき都の町作り」と直した。
1・2をふまえ、空欄部分を書いてみよう。(マスめは余っても可)
名前をつけることでイメ
まう という暴力的
固有名詞
ー
を一 つに決めて
奈良という地名は、濃いイメージをもってしまっている。 それをうまく使えば、 これは強力な力になる
のだが、逆に、その力に縛られもする。 尾形氏は、この場合は単に、ふるき都という言葉で古雅の感じを
おくにとどめ、「他のいっさいは読者の想像力のはたらきに委ねようとしたものでしょう」と書いておられ 30
もつ
はうまく使
ある 固有名
ば強力なカ
固有名詞は、地名でも人名でも、大きな力をもつものである。 その力を知ったうえで使うことが、言語
表現者にはいつも求められる。 言い足りないが、 固有名詞は文章の方向まで決めるものである。
まずはじめに 本文で挙げられている二つの具体例を確認する。 それぞれの具体
3 百字要旨 ② 自分で、百字以内で書いてみよう。(マスめは余っても可)
例に共通する内容をおさえて、筆者の考えをまとめよう。 なお、要旨をまとめる際に
は、 具体例ではなく、その例から筆者が言いたい内容を書くようにする。
要旨作成へのスタート(速読にも役立つ注目ポイント)
●話題と筆者の気づき
「亀岩」と名づけられた岩と、句から省かれた「奈良」という地名からわかる、固有名
詞の力について。
固有名詞にはさまざまなイメージを一つに決めてしまう暴力的な力がある。
固有名詞のもつイメージは強力な力になるが、逆にその力に縛られもする。
筆者の所感
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