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5小説288
いうことが、それだけで既に許すべからざる悪であった。もちろん、下人は、さっ
きまで、自分が、盗人になる気でいたことなぞは、とうに忘れているのである。
そこで、下人は、両足に力を入れて、いきなり、はしごから上へ飛び上がった。
そうして聖柄の太刀に手をかけながら、大股に老婆の前へ歩みよった。老婆が驚
いたのは言うまでもない。
ばね仕掛けで矢や
石を発射した大型の
老婆は、一目下人を見ると、まるで腎 にでもはじかれたように、飛び上がった。
「おのれ、どこへ行く』
下人は、老婆が死骸につまずきながら、慌てふためいて逃げようとする行く手
を塞いで、こう罵った。老婆は、それでも下人を突きのけて行こうとする。下人
はまた、それを行かすまいとして、押しもどす。二人は死骸の中で、しばらく、
無言のまま、つかみ合った。しかし勝敗は、はじめから、わかっている。下人は
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とうとう、老婆の腕をつかんで、無理にそこへねじ倒した。ちょうど、鶏の脚の
ような、骨と皮ばかりの腕である。
何をしていた。言え。言わぬと、これだぞよ」
下人は、老婆を突き放すと、いきなり、太刀の鞘を払って、白い鋼の色を、そ じ
はがね
がフ
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