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|ある貴族の姫君に人目を避けて通う 男が いたのだろうか、2 1たいへんかわいらしいユ
ある(君達に 忍びて 通ふ人やありけむ、 (いと うつくしき児さへ
副助:添加
子どもまでができたので、男は女を)
出で来にければ、
「係り結び
いとしいとは
あはれとは“思ひ聞こえながら、きびしき片つ方やありけむ
本妻がいたのだろうか、(通うことが)途絶えがちであった頃、 (1 e
絶え間がちにてあるほどに、
創思い申し上げながら
厳しい
3子どもは)忘れもせず、
係り結び
ひどく(男を)慕うのがかわいらしくて、(男は)時々は、 自分の住むところに連れて行ったり
、思ひも忘れず、いみじう 慕ふがうつくしう、
時々は、ある所に
渡しなどす
1
*久しぶりに(男が)立ち寄ったところ、(子どもは)
立ち寄りたりしかば、
助動·完了 助動·過去」
などするのを、(女は)「すぐに返してください」などとも言わないでいたが、
るをも、
「いま」なども
言はでありしを、
接助·打消接続 助動·過去
とても寂しそうな様子で、(男は子どもを)かわいく思ったのだろうか、(頭を)撫でたりして 面倒を見ていたが、とどまることのできない
ほど経て
いと さびしげにて、
めづらしくや思ひけむ、かきなでつつ見あたりしを、え立ちどまらぬ
「係り結び
れし呼応の副詞
用事があって 出て行くのを、(子どもは父親に連れて行かれるのが)習慣になっていたので、 いつものように(男のあとを)しきりに
ことありて出づるを、
L 0
ならひにければ、例の
いたう
ついて行きたがるのが(男には)かわいそうに思われて、 しばらく 立ち止まって、
幕ふが人る ①
それなら、さあ一緒においで」と言って、
あはれに おぼえて、しばし立ちどまりて、「(さらば、いざよ」とて、_
抱いて
出て行ったところ、5(女は)とても切なそうに
見送って、
前にあった香炉を
手先でもてあそびながら、
かき抱きて出でけるを、
いと 心苦しげに見送りて、前なる 火取りを手まさぐりにして、
子どもまでがこうしてあなたのあとを追ってさまよい出てしまったら、残された私は、薫物の火取りという名ではないが、一人」
でいっそう恋い焦がれることでしょう
こだにかくあくがれ出でば薫物のひとりゃいとど思ひこがれむ
改ケる
。
掛詞(「火取り」と「一人J) 掛詞(「(思)ひ」と「火」)
聞いて
しみじみと 思われたので、
しこ
どそっと
ロずさむのを、
(男は)扉風の
後ろで
たいそう