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PELION STA
PONEDABAR
今井むつみ
オカピの胃袋はいくつか
私たちは世界について、膨大な知識を持っています。 そして、直接見たり、経験したり
したことがないことについても、たくさんのことを知っています。 私たちは多くのことを
学校で学びますが、それが私たちの知識のすべてではありません。 ことばを自然に、知ら
ないうちに覚えたように、私たちは世界についての非常に多くのことを、自然に、知らな
いうちに身につけます。 しかし、どうして直接経験したことがないこと、教えてもらって 5
いないことについて知ることができるのでしょう。
「突然ですが、 みなさんは「オカピ」という動物を知っていますか。 写真を見ると、ちょっ
とシマウマに似ています。 シマウマのように全身にシマがあるのではなく、体の大部分は
こげ茶で脚だけにシマがある、とても美しい動物です。 最初に見つかった時は見た目のせ
いでしょうか、シマウマの仲間であると発表されましたが、あとからキリンの仲間である。
ことがわかりました。
ところで、事典やインターネットでオカピについて調べる前に、オカピがどのような特
徴を持つ動物か、自分で考えてみてください。 例えば、オカピには蹄があると想像できま
ひづめ
すね。では、オカピの蹄は一つでしょうか、二つに分かれているでしょうか。ちなみに、
シマウマの蹄は一つ、キリンの蹄はウシなどと同じで二つです。 蹄が一つの動物と、蹄が
二つの動物では、胃のつくり、食べ物の消化のしかたなどが異なります。 例えば、蹄が二
1はんす
つある動物は、一部の例外を除いてみな、ウシのように複数の胃を持っていて、食べ物を
反芻しながら順番に消化していきます。 オカピはいくつの胃袋を持ち、どのように食べ物
を消化するのでしょうか。
おそらく、みなさんは、オカピのことを知らなくても、 キ
リンの仲間だと聞いただけで、草食動物だと思ったはずです。
もしかしたら、首を伸ばして木の葉っぱなどを食べる、と思っ
たかもしれません。 蹄もキリンと同じように二つに分かれて
いる、と思い、さらに、複数の胃を持っていてウシのように
徐々に食べ物を消化していく、と思った人が多いのではない
でしょうか。
これらはすべて正解です。このように、オカピはキリンの
仲間である、という知識から、私たちはオカピについてさま B
ざまなことを類推することができるのです。
「私たちは、一つのことを知れば、それを元に、似た事例に
ついて類推していくことができます。そうすることによって、
直接経験していなくても、教えてもらっていなくても、おの
ずと、世界について多くのことを身につけていくのです。
5 論理を読み取る
読む
論理の展開を読み取ろう
V KALAU ADA SVAKODN
筆者の主張とその根拠を
しながら読もう。
□具体例の働きをとらえ、 具体
と抽象の関係を考えながら読
もう。
1反芻 ウシなどの動物が、 一度飲
み込んだ食物を口の中に戻し、か
み直して再び飲み込むこと。
語句
ちなみに
おのずと
漢字
経験(経過・経る)
体験
突然 突撃・唐突)
特徴(象徴)
特長
除く(除去・削除) 加える
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