◆実戦問題 144
ねどころ
妻に先立たれた男が) 「いかで今一度* ありしながらの姿を見む」と涙にむせび
つつ明かし暮らす間に、ある時、夜いたう更けて、この女寝所へ来たり ③ 4 夢
かと思へどさすがにうつつなり。うれしさに、まづ涙こぼれて、「さても、 *命
つきて生を隔てつるにはあらずや。いかにして来たり給へるぞ」と問ふ。「
かなり。うつつにてかやうに帰り来たることは、ことわりもなく、ためしも聞か
ず。されど、今一度、1見まほしく覚えたる志の
ほか
わりなくして来たれるなり」と語る。その外の心の中、書きつくすべからず。
枕をかはすこと、ありし世につゆかはらず。
あかつき
けしき
暁起きて出でさまに物を落としたる気色にて、寝所をここかしこ探り求む
何とも思ひ分かず
K
Exercise
見まほしく覚えたる志の深きによりて、ありがたきことを