そちどの
3
えことば
2みなみのみん
帥殿の南院にて人々集めてあそばし
しに、この殿渡らせ給へれば、思ひかけず
なかのくわんぱくどのおぼ
あやしと、中関白殿思しおどろきて、い
5きやうおう
みじう饗応し申させ給うて、下﨟におはし
ませど、前に立て奉りて、まづ射させ奉ら
や かず
せ給ひけるに、帥殿の矢数いま二つ劣り給
おまへ
ひぬ。中関白殿、また御前に候ふ人々も、「い
ま二度延べさせ給へ。と申して、延べさせ
給ひけるを、やすからず思しなりて、「さ
らば、延べさせ給へ」と仰せられて、また n
射させ給ふとて仰せらるるやう、「道長が
みかど きさき
家より帝、后立ち給ふべきものならば、こ
の矢当たれ。 と仰せらるるに、同じものを
なから
中心には当たるものかは。 次に帥殿射給ふに、いみじう臆し給ひて、御手も
100むへんせかい
わななくけにや、的のあたりにだに近く寄らず、無辺世界を射給へるに、関1
11にふだうどの
白殿、色青くなりぬ。また、入道殿射給ふとて、「摂政関白すべきものな
らば、この矢当たれ」と仰せらるるに、初めの同じやうに、的の破るばかり、
同じ所に射させ給ひつ。饗応し、もてはやし聞こえさせ給ひつる興もさめて、
こと苦うなりぬ。父大臣、帥殿に、「何か射る。な射そ、な射そ。と制し給
おとど
ひて、ことさめにけり。
だいじゃうだいじん
【太政大臣 道長】
さぶら
弓を射る道長と伊周 『大かゞみ絵詞』
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