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1 白
新傾向問題
くろうど
5 「やさしき蔵人」
を知ろう1
引き歌や本歌取りという和歌の技法に着目した問題です。
●古文には、古歌を自分の和歌や文章に取り入れる引き歌や、 古歌の一部分を
詠み込むことで新しい歌境を表現する本歌取りという技法があります。
●古歌をふまえて、本文の和歌の世界を正確に理解することが求められます。
【文章】と会話を読んで、後の問いに答えよ。
【文章】
後徳大寺の左大臣、小侍従と聞こえ歌よみに通ひ給ひけり。ある夜、
あかつき
くらうど
物語して、暁帰りけるほどに、この人の供なりける蔵人といふものに、
「いまだ入りもやらで、見送りたるが、ふり捨てがたきに、立ち帰りて、
何ごとにても、言ひて来」とのたまひければ、「ゆゆしき大事かな」と思
ど、ほど経べきことならねば、やがて走り入りて、車寄せに、女の立ち
たる前についゐて、「申せと候ふ」とは、さらなく言ひでたれど、何と
も言ふべしともおぼえぬに、折しも里の鶏 声々鳴き出でたりければ、
にはとり
ものかはと君が言ひけむ鳥の音の今朝しもなどか悲しかるらむ
とばかり言ひかけて、やがて走りつきて、「車寄せにて、かくこそ申して
ひつれ」と申しければ、いみじくめでられけり。
『十訓抄」 5課の一部)
最後に「いみじくめでられけり」とありますが、どうして
蔵人を褒めたのですか。
先生
蔵人が詠んだ「ものかはど・・・」の歌は、小侍従がかつて詠んだ「待
つ宵に更けゆく鐘の声聞けばあかぬ別れの鳥はものかは」(『新古今和歌集』)
という歌をふまえて詠まれているんだよ。
第
生徒
こじじゅう
たま
合計
/20
は
なごり
「あかぬ別れ」は「名残惜しい別れ」、 「ものかは」は「ものの数で
はない」という意味。 小侍従の歌は、「男の訪れを待つ宵のAの
の切なさなど、ものの数では
つらさに比べれば、男を帰す暁の
ありません」という意味で、C の方がはるかに悲しいと歌ってい
と、あなたが言ったという が、
る。一方、蔵人の歌は、「
今朝だけはどうしてこんなに悲しく響くのでしょうか」という意味で、
Wの悲しさを強調することで、主人の気持ちを表現している。だ
から蔵人は褒められたんだよ。
書き込みをしながら本文を読もう。
(蔵大)
●次の二つの和歌に共通する語句同じ意味の語にを引こう。
ものかはと君が言ひけむ鳥の音の今朝しもなどか悲しかるらむ
待つ宵に更けゆく鐘の声聞けばあかぬ別れの鳥はものかは
空欄にあてはまる適切な語句を 【文章】 から抜き出せ。
問二空欄A~Cにあてはまる適切な語句をそれぞれ次から選べ。
ア鐘の声 イ鳥の声
(各2点)
問三空欄Ⅱ~Ⅳにあてはまる適切な語句を「ものかはと…..」の和歌からそ
れぞれ抜き出せ。
(各3点)
吉
JI
IV
(小侍従)
(5点)