天気は空の状態それ自体で決まってくるのではなく、海水の温度や地表の温
度、周囲の気圧配置など外部の諸々の要素からの影響によって決まっている。
私たちの心もそれ自体で決まることはなく、 周囲の人との関係の中で決まっ
てくる。
心が元気であるかどうかは、 人との関係が大きい。
癒しも幸福感も、その原点にあるのは、 人との関係であるといえる。
私たちは太古の昔から、癒しを必要としてきた。 病苦の淵にいる人を癒し、
元気を取り戻してもらうことは、社会の中に再び招き入れることであり、その
ためには何よりも緊密な人とのつながりが必要である。
緊密な人とのつながりとは何だろうか。
きずな
たとえば人は愛を 「触れる」ことで伝えようとする。 人に愛情を持って触れ
ると、互いの脳では「絆ホルモン」といわれるオキシトシンが分泌され、リラ
ックスし、 ストレスが癒され、 深い絆を築くことができる。 そのパワーは絶大
だ。
しかし直接触れなくても、愛情を持って人と近くにいるだけで互いの皮膚は
相手を感じて反応し始める。その反応が、癒しに向けた治癒力を発揮させる大
きな力となってくれる。
心を開いて相手に寄りそうだけで、大きなパワーを与えることができるの
だ。 それと同時に、 自分自身の皮膚も反応して、 同じかそれ以上のパワーをも
らうことができる。
被災地でボランティア活動をした人が、 よく 「被災者からパワーをもらった」
と口にする。
相手を癒そうとして相手に力を与えたことで、自分も力をもらえたのだ。
出典:山口創著 (2016 ) 「人は皮膚から癒される」
株式会社草思社