あなたは、川の水がなぜなくならないか、考えたことがありますか。
水は上から下へ流れています。( A )、いつかなくなってもよさそ
うなものなのに、なくならないのはなぜでしょうか。日本のような急」
斜面の国土では、雨は一日で海へ行ってしまってよいはずです。それ
なのに、晴れた日でも流れているのはなぜでしょうか。
その秘密こそ、森林にありました。森林は、そのふところ深く雨を
受け入れると、少しずつ地下へ送り込み、やがて下流へはき出してく」
れました。地下水の流れは非常にゆっくりとしています。降った雨が
地下にしみ込み、再び地表にわき出てくるには、三百年も五百年もか
かっているほどです。ですから、私たちは江戸時代の水も飲んでいま
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土にしみ込まず、地表をすべりおちる水は、洪水です。一日で海へ
捨てられてしまう水ですね。
ゆっくりと、地下をくぐってきたわき水は、集まって谷川になり、
小さな川になり、やがて大きな流れになって、平野をうるおしてくれ
ました。日本では、少しぐらい日照りが続いても水が絶えなかったの
は、国土の七割を占める大森林のおかげでした。
もう一つ、不思議なことがありました。森林の土はなぜ、水に溶け
てなくなってしまわないのでしょう。
私たちが、ベラングやコンクリートの道の上に、植木鉢の土をひっ
くり返したりして放っておくと、いつのまにか土はなくなってしまい
ます。(B )山の斜面には、いつも士がありますね。不思議です。
それもまた、森林のおかげでした。森林の木の根がしっかりと土を一
かかえて、斜面にはりつけていたのです。土ばかりではありません。
土の下にある岩石も、木の根は抱きかかえてくれました。