10
5
1111ロ
なげきつつひとり寝る夜
NS
九月ばかりになりて、出でにたるほどに、箱のあるを手まさぐりに開けて
見れば、人のもとにやらむとしける文あり。あさましさに、見てけりとだに
知られむと思ひて、書きつ
うたがはしほかに渡せるふみ見ればここやとだえにならむとすらむ
など思ふほどに、むべなう、十月つごもりがたに、三夜しきりて見えぬ時あ
つれなうて、「しばしこころみるほどに』など、気色あり。
5す かた
これより、タさりつかた、「内の方ふたがりけり』とて出づるに、心得で、
たま
O
人をつけて見すれば、「町の小路なるそこそこになむ、とまり給ひぬる」と
て来たり。さればよと、いみじう心憂しと思ぺども、いはむやうも知らであ
人めり