奈良時代
平安時代
鎌倉時代 室町時代江
700
800
900
1000 1100 1200 1300 1400 1500
1600
1
*111コ
はかまだれ
袴垂、保昌に合ふ事
昔、袴垂とて、いみじき盗人の大将軍ありけり。十月ばかりに、衣の用な
2たいしゃうぐん
りければ、衣少しまうけんとて、さるべき所々うかがひありきけるに、夜中
おぼろ
ばかりに、人みな静まり果ててのち、月の麓なるに、衣あまた着たりける主
5れJSm 6そば
7かりぎぬ
の
指貫の稜挟みて、絹の狩衣めきたる着て、ただ一人、笛吹きて、行きも
やらず練り行けば、「あはれ、これこそ、我に衣得させんとて出でたる人なめ
り。」と思ひて、走りかかりて衣を刺がんと思ふに、あやしくものの恐ろしく
おぼえければ、添ひて二、三町ばかり行けども、我に人こそつきたれと思ひ
たるけしきもなし。いよいよ笛を吹きて行けば、試みんと思ひて、足を高く
して走り寄りたるに、笛を吹きながら見返りたるけしき、取りかかるべくも
カ)
あまたたび、とざまかうざまにするに、つゆばかりも騒ぎたる
おぼえざりければ、走り退きぬ。