◇古典を学ぶ意味について考えてみよう
たけにしひろこ
|古典を読むということ
竹西寛子
どんなに単純なことにも、たいてい複数の原因があって、他との関係抜きでありえ
ないのは大方の事物の運命であるらしい。人間とてもその例外ではなく、自分一個の
生存を考えてもことは決して単純でない
今をよりよく知ろうとして、今を今として成り立たせている過去を知ろうとするの
いうまん
は、少なくとも騎慢でない人間の自然であり、それは、今後をいかに選択するかに直
結しているという意味において生産的な行為のはずである
実生活の具体的な様相や人間の心用いのさまざまは、歴史書よりも物語のほうに
ずっと詳しいと言ったのは『源氏物語」の作者であったが、日本人の歴史、ことに感
受性の歴史をたどろうとするとき、なるほどその具体性において文学作品を超えるも
のはまずないといえよう