小神朋子「白いタンポポー
彼女は何か不思議なものを見るように手のひらの上の野菜片一
を見つめ、そして一つつまんで金網の中に差し入れた。金網の
中の住人は押し合いへし合いしながら、少女のもとへやってき
た。女の子はそれきり私のほうを見ようともせず、ぼりぼりと」
音を立ててえさを食べるうさぎに、じっと見ほれていた。
ずいぶん人見知りする子だな、と思ったが、別にフユカイで
はなかった。私自身、かつてそんな子供だったから。
今の私を知っている人は、きっとだれも信用しないに違いな
いが、昔の私は、本当におとなしく 国的な子供だったのだ。
いつも本ばかり読んでいた。でなければ、文字どおり夢みた一
いなことばかり空想していた。何年生のときだったか、保健体
育の教科書の中で、それらの行為が《逃避〉という冷ややかな
言葉で片づけられていることを知り、私は深く傷ついた。
そしてまた、算教で教わった「集合」のガイネンは、私を悲
しくさせた。あるとき配られたプリントには、きれいな花が印一
刷してあった。さまざまな条件で、花たちを分類していくのだ。
赤い花、黄色い花、花びらが五枚ある花:
花びらが四枚の青い花はずっと残り続け、最後に「花」とい」
う条件でひとくくりにされるまで放っておかれていた。
あの青い花が私には悲しかった。自分に似ているとも思った。
(『ななつのこ)
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