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科学は具体的な経験の一面を抽象し、抽象化された経験は、他の同類
の経験と関係づけられて分類される。このように抽象化され、分類された経験
は、原則として、一定の条件のもとで繰り返されるはずのものである。従って
科学は、法則の、普遍性について語ることができるのである。たとえば一個の
具体的なレモンは、その質量・容積・位置・運動等に還元されることによっ
て、その他の性質、たとえば色や味や産地や値段を捨象されることによって、)
力学の対象となり、またその効用や生産費や小売価格などに還元されること
によって、その他の性質、たとえば位置や運動量などを捨象されることによ
って、経済学の対象となる。力学や経済学は具体的なレモンについてではなく、
抽象化された対象について、その対象が従う法則をしらべるのである。
かとうしゅういち
出典 加藤周一『文学とは何か』