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(刊) ステップ2
問題提起
だ。
評論
デザインの教科書
本文ガイド
――線部はガイドの解答例
かしわぎ
ひろし
柏木博
博
今日の私たちの環境は、牛のゲップすら問題になるほど深刻な事態にある。 温暖化によって、永久凍土が溶け
出し、閉じ込められていた二酸化炭素が出てくるなどという話は、たしかに恐ろしい。深刻ではあるけれども、
エコロジー的な考え方をほとんど機械装置のような思考にしてしまい、一点突破をするような行動に結びつけて
しまうことのほうが、さまざまな問題を生み出すように思えてならない。ここはひとつ、肩の力を抜いて、エコ
ロジー的な生活実践を、「有機的」に考えたいところである。そして、それを実現する手だてのひとつとして、やは 5
デザインがあるのではないかと思える。
肩の力を抜いて、ユルやかな気持ちで有機的な思考をいざなうために、少々、おもしろい話を紹介しておきたい。
フランスのテレビ番組で行った興味深い実験がある。マルセイユの港の汚染された海水のなかで元気に泳いで
タコをサイシュし、まったく汚染されていない海水の入った水槽に沈めてやる。そうするとなんと数秒後に
はタコは収縮し、スイジャクして、やがて死んでしまう。
私たちを含めた生物に必要なことは、バランスである。タコに必要なのはつねに汚染された水質環境だという
ことではない。そうではなくて、一気にそれまでの環境を変化させることが、危険をもたらすというにすぎない。
重要なことは、「環境のエコロジー」だけを考えるのではなく、同時に人間関係などの「社会的エコロジー」そして、
私たちの主観や主体にかかわる「精神的エコロジー」、そうした三つの要素を有機的に考えていくことこそが重要
なことであり、現状の解決をもたらすのではないか。
タコのエピソードを持ち出し、三つの「エコロジー」を提案したのは、思想家のフェリックス・ガタリである。
彼は、三つのエコロジーを「エコゾフィー」という造語でまとめることを提案している。
⑥「地球という惑星は、今、激烈な科学技術による変容を経験しているのだが、ちょうどそれに見合うかたちで恐
るべきエコロジー的アンバランスの現象が生じている。このエコロジー的アンバランスは、適当なチリョウがほ
めどこされないならば、ついには地上における生命の存続をおびやかすものとなるだろう」とガタリは述べている。
と また、具体的には「エコシステム、機械領域、社会的・個人的な参照系といったものの相互作用を《横断的に≫考え
まていく習慣をわれわれは身につけねばならないのである」という。
⑦言い換えれば、「精神」「社会」「環境」に対する行動の最適性がどこにあるのかを探っていかなければならない。
つまり、何かをデザインするときに、これまでは、技術、 経済的コスト、市場などいくつかの要件のなかで最適
性を求めなければならなかったわけだが、そこに、さらに「三つのエコロジー」という要件が加わったということ 25
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