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いうことらしい。
ブフネラというアリマキ(アブラムシ)と共生している細菌がいる。アリマ
キは植物の害虫で師管液を吸汁して生きている。師管液には光合成に由来す
糖分が多く含まれているが、タンパク質のもととなるアミノ酸はほとんど
含まれておらず、アリマキは常に糖分過多である。 ブフネラはそんなアリマ
キにアミノ酸を合成して与え、その代わりに過分にある側をもらって生きて
いる。ブフネラとアリマキの共生は細胞内共生という少し特殊な形態で行わ
れており、アリマキは体内に菌細胞という特別な細胞を作り、プフネラはほ
ぼ一生をその菌細胞の中だけで過ごすことになる。彼らの共生の歴史は長
共生生活を始めてからすでに二億年になると推定されている。 二〇〇〇
年に日本人研究者によって、このブフネラのゲノム配列が決定されたが、そ
の結果は驚くべきものだった。
すべての遺伝情報
【図】 アリマキ (アブラムシ)とプフネラ
アリマキ
(アブラムシ)
植物の
① 3字
② 1字
アミノ酸
プフネラは私たちの腸内にいる大腸菌と近縁の細菌だが、大腸菌と比べる
と持っている遺伝子の数が約七分の一になっていた。これはアリマキの菌細
胞内での長い共生生活の間に、アリマキ側から提供してもらえるものは、自分で作る必要もないよねと、どんどん遺伝子を捨
てていった結果と考えられている。私たち人間も、たとえば結婚すると、それまで別々に持っていた洗濯機とかアイロンとか
炊飯器とか、二つあっても仕方のないものがたくさん出てきて、人にあげたり捨てたりして処分することがあるが、それと同
じようにブフネラは自分の遺伝子を次々と処分してしまい、気づけば二億年の間に遺伝子の数が七分の一になってしまったと
しかし、そんなブフネラは当然もうアリマキと離れては生きていけない。 大腸菌なら人の体内から外に出て、たとえば川で
も他の中でも生きていけるが、ブフネラはアリマキの体から取り出すと、自然界では生きていけないし、人工的にどんな栄養
素を与えても培養すらできない。自分ひとりでは外敵と戦うことはおろか、自分の細胞膜さえ作れないのである。大学でそん
なプフネラの話を紹介すると、ブフネラはもう生物じゃない、という意見が出てくる。ブフネラはアリマキの体外に出てひと
で生きていけない以上もうアリマキの一部であり、一人前の独立した生物として認めることはできないということだ。ブフ
ネラの生態を考えれば、もっともな意見である。
植物
ブフネラ