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中を向けて出ていった。通ちゃんが玄関で靴を出す音を聞いていると、ま
た外から風が吹いてくる感じがする。罰の色。車の音。信号機の色。お店
●解守| 的文章
の明かり。料理のにおい。花みたいにキレイな眼の色。かすかに潮のにお
いのする少し冷たい五月の夜風。一
通ちゃんが出ていく外の世界。
私の知らない夜の世界。
つまんねえ! 置いていかれるコドモなんてまっびらだ。ても、出てい
くオトナになりたいわけじゃない。私はただ当り前のように落ちついて、
ここの家にいたいだけなんだ。
タマネギが目にしみた。涙が出る。いやだ。涙なんか出したくない。
私は二時間近くかけて、鶏肉とタマネギとニンジンとジャガイモのク」
リーム:シチューを作り上げた。少ししか食べなかった。すげえ、まずかっ 。
たから。チクショー。永久に凍っていろと思いながら、まだ熱いうちに大一
きなタッパーに詰めて冷凍室に入れた。
自分チのドアを開けた時、おも1い気持ちがするのって、やっぱり不幸一
なのかな。フツウの家だよ。藤沢の市役所勤務の父、編物教室をやってる
母、東京の女子大てバイトとコンパにいそしむ姉。三人は仲良くやってる。s-
私だけダメだ。昔っから。
私を見ると、お母さんは一瞬、迷惑そうな顔をして、
「あら、通のとこじゃなかったの? 食事は?」
と問いた。私はのろのろとかぶりをふって「いらない」とつぶやいた。
「食べたってこと?」
「私」は、イラストレーターをしている叔父の通の家に、買い入れた食料
を届けに遵に三日は通っている。
台所でタマネギを刻んていると、見たことのないグレーのジャケットを一
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
ジーンズの上に消織って、通ちゃんがひょいとのぞきこんだ。あ、いい」
色1 グールグレー4。知らないジャケットを見ると、外の旅しい風の一
においを感じる。
「あ、わりい、俺、出かけるよ」」
通ちゃん、軽い声。
「ャここ」
私はまた包丁の音をたてる。
「帰んないのかよ?」
ちょっと呆れた声。
「だって、シチュー食べたいんだもん』
「あんたのお母さんのほうが料理はうまいてしょ」
私の母を絶対に姉さんと呼ばない叔父は、そんなことを言う
「だせえ1」」
と私は言った。通ちゃん、年寄りになったな。そんなセッキョっぽいこ」
と、言わなかったのになあ。イヤだなあ。通ちゃんはフンと肩で笑って背一
お母さんは取り調べみたいに鋭く聞く。その聞き方がイヤて返事をした一
くなくなる。黙っていると、お母さんは疲れた顔になって、
「お父さんもお姉ちゃんも、今日は早く帰れるからね、カツオのお刺身を一
買ってきたの。たまには、一緒に食事…」
「Sるら」
表現>「私」とお母さんの会話から、どんな様子が読み取れますか
適切なものを次から一つ選び、記号て答えなさい。
7 お母さんに対して「私」が気をつかっている様子
ィ お互いに自然にふるまえず、ぎくしゃくした様子
ゥ お母さんに対して「私」がとまどっている様子。
ェ お互いに顔を合わせることを恥ずかしがっている様子。
みんなて、食事をするのが、ほんっとに嫌いだ。みんなだって、私がい
ないほうがいいに決まってるのに、なんていさせようとするのか、わから
ないんだ。
佐藤多佳子「黄色い目の魚」より》
(注) クールグレージ4=灰色系統の色。
e内容理解> 線の「セッキョつぱこと」とありますが、「通ちゃ
ん」は「私」に、どんな“説教っぽいこと。を言ったのですか。二十字
以内で書きなさい。
場面>この文章を内容のうえから大きく二つに分けると、どこで分一
けられますか。後半部分の初めの六字を文章中から抜き出しなさい。
人物像> この文章て、「私」はどんな女の子として描かれています
か。適切なものを次から一つ選び、記号で答えなさい
7 家族と一緒にいることを嫌い、一人で食事をすることを好むような
孤独を愛する女の子。
ィ 自分が安らげる場所をなかなか見つけられずに、いつもいらだって
や,
4第
|線の「通ちゃんが出ていく外の世界。」のうち、「私」が
想像しているものについて具体的に描写されている部分を文章中から抜一
き出し、初めと終わりの五字を書きなさい。
いる女の子。
ウ わがままを言って大人たちを困らせては、その反応を楽しんている」
4
一線「涙が出る。」とありますが、このときの「私」の
気持ちを二十字以内で書きなさい。
ような女の子。
ェ 大人の世界にあこがれ、周囲が自分を大人として扱ってくれないこ
とに不満を抱く女の子。
N
高品
(10)連立方程式の解き方(2)
実力をつけよう
加減法(両方の式を何倍かする)
|基礎を
第4章 文学的文章図