話
「まあな。あ、むろん、野球は続けるで。美作に帰って、チビッコたち
に野球のおもしろさを伝えられたらええもんな。そういうの、ええじゃ
* ぎゅう
ろ。奈義牛レベル、つまり最高よな」
実紀が笑う。屈託のない笑みだ。
つま
どん。強く胸を衝かれた。束の間だが、息が詰った。
初めて実紀の想いを聞いた。渓哉は飛び立つことばかりに心を奪
われていた。未知の場へ、未知の世界へ、ここではないどこかへ飛び立一
つ望みと不安の間で揺れていた。
つばさ
自分の背に翼があって、どこまでも飛期できる。なんて夢物語を信じ
ているわけじゃない。でも、思い切って飛べば、何かに出会えて道が開
けるんじゃないかとは期待していた。
こんきょ
(く、根拠のない、そして他力本願の期待だ。ふわふわと軽く、ただ
浮遊する。少し強い風が吹けば、さらわれてどこかに消え去ってしまう
だろう。
かくご
実紀の想いには根っこ、
実紀の想いには根っこがある。現実に向かい合う覚悟がある。
いっしょ
ずっと一緒にいた。ずっと一緒に野球をやってきた。
たが
互いの家を行き来して、「あんたら、どっちの家の子かわからんよう