次の文章を読んて後
答えなさ
*①相模守時頼の母は、松下禅尼とぞ申しける。 *守を②入れ申さるる事ありけるに、すすけたる 明り障子の破ればかりを、
禅尼手づから、小刀して切りまはしつつ張られければ、兄の城介義影、その日のけいめいして③候ひけるが、「給はりて、
*なにがし男に張らせ候はん。さやうの事に心得たる者に候ふ」と④申されければ、その男、尼が細工によもまさり得らじとて、
⑤なほ一間づつ張られけるを、義景、 「皆を張りかう候はんは、はるかにたやすく候ふべし、まだらに候ふも見苦しくや」とかさね
て申されければ、「尼も、後は*さはさはと張りかへんと思へども、今日ばかりは、わざとかくてあるべきなり。 物は破れたる所ば
を修理して用ゐる事ぞと、⑥若き人に見ならはせて、心づけんためなり」と申される、⑦いとありがたかりけり。
*相模守時頼=鎌倉幕府の執権であった北条時頼。
守を入れ申さるる事=時頼を招待なさる事。
*明り障子=明りをとるために薄い紙を張った障子。
*城介義景=松下禅尼の兄、安達義景。
*けいめいして=準備につとめて。
*なにがし男=だれそれという男。
*さはさほと=すっきりと。