Muster
会や中人(ハン
HARLE
15
4,
いるだ
は急にぼんやり
母とホンルとは寝入った。
も横になって、船の底に水のぶつかる音
し合い、現にホンルはシュイションのことを慕っている。せめて彼
■とわかった。思えば私とルントウとの距離は全く遠
いに隔絶することのないように…とはいっても、彼らが一つ心ていたいがために
思うに、むだの積み重ねて魂をすり減らす生活を共にすることは願わない。 また、ル
のように、打ちひしがれて心が麻痺する生活を共にすることも願わない。また、他の
うに、やけを起こして野放図に走る生活を共に
することも願わない。希望をいえば、彼らは新
しい生活をもたなくてはならない。私たちの経
験しなかった新しい生活を。
5
希望という考えが浮かんだので、私はどきっ
とした。たしかルントウが香炉と燭台を所望し
たとき、私は、相変わらずの偶像崇拝だな、い
つになったら忘れるつもりかと、心ひそかに彼
のことを笑ったものだが、今私のいう希望も、
やはり手製の偶像にすぎぬのではないか。ただ、p
彼の望むものはすぐ手に入り、私の望むものは
手に入りにくいだけだ。
まどろみかけた私の目に、海辺の広い緑の砂
人の目に、毎辺の広い緑の
地が浮かんでくる。その上の紺碧の空には、金切
色の丸い月が懸かっている。思うに希望とは、
もともとあるものともいえぬし、ないものとも
いえない。それは地上の道のようなものである。
もともと地上には道はない。歩く人が多くなれ
それが道になるのだ。
あかば すえきち
赤羽末吉・絵各岡~