「将来のこと、 考えておいた方
がいい」。自宅を訪れた医師にそ
う言われて、戸惑った表情を浮か
商|べたことを覚えている。 かつて取
材した筋委縮性側索硬化症(AL
s) の男性だマ筋肉を動かす神経が侵され
る難病で、男性は0代でまだ何とか歩けた
が、やがて呼吸するのも難しくなる。「将
来」とは、そのときに人工呼吸器をつける
かどうか。つければ命が延びる代わりに介
護負担は増す。妻一人では大変だろうと、
岡山県北の古里に戻り親族も頼れるとはい
え、男性の苦悩は理解できた>「安楽死」
を希望したALS患者の嘱託殺人事件を受
け、その是非についての議論が注目されて
いる。懸念するのは、患者が「生きたい」
と言いにくくなることである▼日本で安楽
死は認められていない。だが、呼吸器の装
着などを控える「尊厳死」は法制化を目指
す動きがある〉安藤泰至。鳥取大准教授の
著書「安楽死·尊厳死を語る前に知ってお
きたいこと」によると、この二つは世界共
通とか、学間的に公された定義がない。
シンポジウムなどの議論もかみ合わず、混
乱しがちだそうだ>一方で、国会での議論
は低調だ。自民党の終末期医寮についての
検討チームが先月、久しぶりに開いた会合
に出席した議員は数人だけだったという。
これでは患者の苦悩と向き合う医療の「将
」は到底語れまい。
2020 . 8.4