あれがはじめて詩として成立するんでして。詩にとってこと
がいかに大事かということ、それは現代俳句もそのまま背負い
こんでいる問題です。俳句という五七五の詩型と、それと関連
して、これは季語もそうですが、全体が一つの詩ということば
の空間構造がある。そういう詩の在り方が芭蕉によって新しく
馴られ、定められた。
の用い (森澄雄·魔田二郎「芭蕉と現代」による)
はと
日を武江の北に閉たまへば、雨静にして鳩の声『ふかく、風や
かにして花の落る事おそし。弥生も名残おしき比にやありけ
蛙の水に落る音しば(「ならねば、言外の風情この筋にう
て、「蛙飛こむ水の音」といへる七五は得たまへりけり。晋
傍 に,はべりて、山吹といふ五文字を「かふむらしめむか
をよづけはべるに、唯「古池」とはさだまりぬ。しばらく
400
ころ
たはら
ただ
ルずるに
之、山吹といふ五文字は風流にしてはなやかなれど、古池
ふ五文字は質素にして実也。実は古今の貫道なればならし。
全集一
による)