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【思考・判断・表現】 (2点×5)
七 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
こうして集めた事例を整理すると、不便益」とは何かが浮かび上が
ってくる。 まだ整理の途中の段階ではあるが、 主には次のようなことが挙
げられるだろう。
まず、物事を達成するのにかかる時間や道のりが多くなる分、発見や出
会いの機会が増える。 次に、体力や知力、技術力の維持や向上を促す。自
分の体や頭を使うことが、自然と体力・知力・技術力の低下を防ぎ、それ
らを向上させるからだ。また、「不便」であることは、人間の意欲を向上
させる効果もある。自分で考えたり工夫したりする余地があるからこそ、
取り組むときのモチベーションが高まり、成し遂げたときの達成感が大き
くなるのだ。なお、一つの事例に複数の「不便益」が含まれることも少な
くない。 例えば、タクシーよりも徒歩のほうが発見や出会いの機会が増
えるとともに、運動能力の低下を防ぐことにもなる。
これらの「不便益」は、「不便だからこそ得られるものだ。 「便利は
よいこと」で「不便は悪いこと」という固定観念にとらわれ、ただ無批判
に「便利」なほうばかりを選んでいては、「不便」の価値を見落としてし
まう。(⑩)、「便利はよいこと」という考えの下、社会全体が「便
「利」だけを追求していけば、私たち一人一人は自分でどちらかを選ぶこと
すらできないまま、知らぬ間に、本来得られていた楽しさや喜びが失われ
たり、自分の能力を発揮する機会が奪われたりすることになるだろう。
誤解してほしくないのは、私は便利であることを否定し、昔の不便な生
活に戻ろうと言っているわけでも、不便なことは全ですばらしいと考えて
いるわけでもないということだ。 「不便」だからこそ得られるよさがある
ことを認識し、それを生かして新しいデザインを創り出そうというのが「不
便益」の考え方なのである。 今、この考え方に賛同する仲間たちによって、
自動車の運転支援の在り方や観光ツアーの仕掛け作りなど、さまざまな分
野で新たな研究や提案がなされ始めている。
「不便益」は、物事のデザインだけでなく、日常生活にも生きる発想だ。
あなたの日々の生活の中で、 「不便で嫌だな。」「面倒くさいな。」と思
ってさけてきた物事の中に、実は、新しい気づきや楽しみが隠れているか
もしれない。 これまでの常識とは異なる別の視点をもつことで、世界をも
っと多様に見ることができるようになるはずだ。 あなたの周りには、どん
「不便益」があるだろうか。もう一度、生活を見つめ直してみよう。
(川上浩司「『不便』の価値を見つめ直す」より)
⑥ 「不便益」とは何か とあるが、
(1) 筆者は「不便益」を三つに整理している。その箇所が含まれている
一文をそれぞれ探し、初めの四字を書き抜きなさい。
(2) 「不便益」と同じ意味で使われている七字の言葉を、文章中から書
き抜きなさい。
② タクシーよりも……防ぐことにもなる。とあるが、これはどんな
ことを説明するための例か。 文章中から二十一字で探し、初めと終わ
りの三字を書きなさい。
問3
( ③ )に入る言葉を次から一つ選びなさい。
アだから
例えば
しかし
さらに
問4 筆者はこの文章で、「便利」なほうばかり選ぶとどうなると述べて
いるか。二つ、十六字と四十六字で探し、初めの五字を書きなさい。
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