6歳暮の御祝義申し上げますと肴台をさし出すを見れば、
しまい
ていしゅ
比目魚四枚あり。亭主大きに物いまいにて、さんざん気にか
■そのほう
縁起(えんぎ)かつぎの者なので、たいへん気にして
け、「其方はかれいをくれた。
志はかたじけないが、とてもくれるなら、
いっそのこと
三枚か五枚ならきこえた。四枚とは
わけがわかる
がてん
合点がゆかぬ。さてさてものを知らぬ
といふて、しかりちらせば、ちつともさわがず、「わたくし
おしまい
は、『御仕舞よかれい』とお祝ひ申す心で、四枚あげました
年の終わり
きげん
ものを」といへば、亭主ことのほか機嫌なほり、「おれはまた、
しかれ
そのやうな事とは知らず、ただ其方をしかれいといふ事と思
つた」。
おおたんぽ
(大田南畝「鯛の味噌津」より)
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