点
古典 第四回
時間/八
*キーワードチェックをしましょう。
1 次の文章を読んで、後の各問に答えなさい。(字数制限のあるものは、句読点・符号も一字とする。)
秀吉、山城の伏見に御在城の時、宇治の住人、何のそれがしとやらんに、御秘蔵の鶴を預けおかれしにかの者、夜日大事にいたしけるに、
おい
たいこう たかの
がた
しこう
さうら
もろこし
たうこく
何としてかは、ある時の鶴、籠抜けをしていづちともなく飛行しぬ。 かなたこなたを尋ね歩けどもかひなし。よしそれとても隠しおきては後難
この事つぶさに言上す。秀
逃れ難しとて、伏見に参向し、広間に相詰め、 御出でを相待ち申し、太閤、鷹野に御出での時、御機嫌を見合はせ、
吉聞こしめし、「その鶴は唐国に飛行してやあらん」と仰せられしに、伺候の面々、「いや唐土までは飛行つかまつり候ふまじ、さだめて日本の
5 地
[ゐまうすべけれ」と申し上げければ、秀吉聞こしめし、「さあらば苦しからず、日本の地にゐるなれば我が飼い鶴なり」と仰せられ
しとなり。
かなぞうし
かがみ
(『仮名草子集身の鏡』による。 一部改変)
(注)秀吉…豊臣秀吉。 十六世紀後半に天下を統一した。 後に出てくる「太閤」も同一人物。
何のそれがし・・・名前のはっきりしない人物を指す言葉。
鷹野 鷹を使って山野で鳥獣を狩ること。鷹狩り。
苦しからず…かまわない。
伺候の面々・・・そばに仕えていた人々。
さだめて…きっと。
古典 第四回
それとも・・・たとえそうであっても。