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私を笑い、そうして事も無く私を
ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。セリ
ェ 友の信頼に報いること。
うらぎり
-線「ありがたい!……死ぬ事が出来るぞ」とあるが、なぜそれが
ありがたい」のか。文章中のことばを用いて答えなさい。
てくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もう
いっそ、悪徳者として生き延びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。
妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、0
信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。
それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私
は、 醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉。||四肢
まどろんでしまった。
ヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じ
、自4
この文章を展開のうえから大きく二つに分けるとすると、後半はどこから
始まるか。後半の初めの四字を抜き出しなさい。
リ4うほう
を投げ出して、 A
ふと耳に、渥々、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで5
耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。
見ると、岩の裂目から渡々と、何か小さく曜きながら清水が湧き出ているの
である。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で
掬って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がし
た。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた。0
、義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽は赤
い光を樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、
まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待
きこ
せんせん
起き上って、
学習のポイント
だざいおさむ
やけ め
こんこん
太宰治「走れメロス」より。
自分の身代わりになってくれた友の信頼に報いるため、人間の信実というものが存在
することを王に示すため、メロスは走らねばならない。しかし、疲労のあまり、ふと悪
い考えが頭に浮かぶ
ためいき
メロスの置かれている状況。心情の変化に注意して読むこと。
O定法=いつも変わらぬ法則。
Oやんぬる哉=もうおしまいだ。万事休す。
夫井
〇渥々=浅い川などの水がさらさらと流れる音。
してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題
ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼5
O五臓=内臓の総称。ここでは体全体のこと。
に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ!メロス。
私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の嘱きは、
あれは夢だ。 悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあ
んな悪い夢を見るものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは
真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私8
は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、日が沈む。ずんずん沈む。
待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のま
e「こっそりと話した」という意味になるようにする。
a 王は、メロスが時間に間に合うように戻ってくるとは思っていない。つまり、人間
というものを信じていないのである。もし、メロスが王のことばどおりおくれて行け
ば、王は、やはり思ったとおりだった、とメロスをあざ笑うことになる。
A…「まどろむ」は「ちょっとの間、浅く眠る」という意味であることから考える。
B…疲労のあまり眠ってしまった状態から起き上がる場面である。この様子に合う
まにして死なせて下さい。
ことばを選ぶ。
前の段落に「わが身を殺して、名誉を守る希望」とあることに着目。裏切り者にな
らなくてすむ、という喜びである。
時間の経過とともに、メロスが絶望から立ち直ったことが分かる部分からが後半。
国ス中3