〈出て来ぬけれど〉
これ、どこで見た表現でしょうか。
古典文法上、このような形はありえないんですよ。
出で来(いでく)カ変 活用形不明
ぬ?
けれ(過去・詠嘆の助動詞 已然形)連用形に接続する
ど(接続助詞)已然形に接続する
「ぬ」に「けり」の已然形が接続しているので、この「ぬ」は連用形ということになります。
しかし、連用形の「ぬ」は、助動詞には存在しないんですよ。
完了の助動詞「ぬ」の終止形
打消の助動詞「ず」の連体形
のいずれかなんですよね。
ですので、このような表現は、通常の文法ではありえないわけです。
この前に、何か係助詞があるとか、連体形の準体法となるとか、何か特別な状況であれば、
可能性はゼロではないのですが、
いったい、どこの表現なのか、逆に興味がわきました。
〈出て来侍らねば〉
こちらば、問題ありません。
「出で来」に「侍り」(用言)が続いているので、
この「出で来」は連用形です。
ですので、「いできはべらねば」です。
いでき(カ変 連用形)
はべら(ラ変 未然形)
ね(打消の助動詞「ず」の已然形)
ば(接続助詞)